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小粒のメセナ?個人の趣味?アートを支える多層なアクターに突撃


#5:(株)レイコフ×奥山泰徳

○おまけ今回はアートイベントにおける、立場の異なる二人の仕掛人のアートに対する姿勢の違いを伺えました。私にとって新鮮だったのは、不動産のプロフェッショナルであるレイコフの桑原さんたちが地域に対して行った『調査の結果から、アーティストやデザイナーを入居者のターゲットにした』という点でした。最近では、現代アートが美術館などのホワイトキューブから飛び出して発表される機会が増え、街おこしや地域活性の取組みでは「アート」は常套句ともなった感すらあります。その中で行われているもののうち、事前に街の性格を改めて調査した上でその街がアートを中長期的に取り入れていくことが、どのようなメリットをもたらすのかを展望して取組んでいる例は少ないように感じています。それゆえ、一時的に人を呼ぶことだけを目的にアートイベント連発型の街おこしよりも、順慶ビルのように南船場特有の人口バランスを変えるため、デザイナーやアーティストを誘致しようと考えられたことが、とても「まっとう」だと感じたのです。もちろん、アートを「○○のために」活用しようとする時、アートは広告塔であったり、賑やかしとしてしか取り扱われない場合が多くあります。その際に奥山さんのように「なにかが生み出されるワクワクした期待感」や「日常がいつもと違って見えるきっかけ」を呼び覚ますというアートが持つだいご味(と私は思っています)を、悩みながらも伝えようとする翻訳者が必要となるのだと改めて感じました。でも、翻訳の取組みははっきり言ってとても地味です。周りとの調整に奔走し、企業側の方にアーティストとのやり取りを「パートナー」として捉え直してもらうために、作品をひとつひとつ説明したり…。とても地道な人と人のやり取りに高いモチベーションを持って取組めるのは、奥山さんが言うように自分にしかできないと思える瞬間があるからにほかならないと思います。 私が大学生時代、就職活動中に出会ったある企業の人事の方が「自分にしかできない仕事があると思うべきではない」と言っていました。それはある意味、本当なのだと思います。でも、正確に言うなら「自分にしかできない仕事」は既に存在するものではなく、「作り上げていくもの」なのではないでしょうか。私は今回も含めこれまでのインタビューを通してそう教えてもらったように思います。企業の方が「しゃあない」と言いつつ、技術者の方がいつも以上に気を遣うと感じつつ、作品つくりやアートに関わることに「おもしろい」と感じている場面に出会い、私は企業とアートの関係においても日本型の成熟を遂げるには、アートに関わることによって「こだわり」をもって生きるおもしろさがあることを伝播させていく必要があるのではないかと思います。じゃあ、どうやって伝えるかと考えた時に、これまでのインタビューからひとつ思い当るのは、縦割りのシステムにのっとった「お伺い」方式だけで伝えるのでも、横つながりのネットワークからの「カウンターパンチ」方式だけで伝えるのでもだめなのではないかということです。お伺い方式では外部へ負担をしいることになり、一方のカウンターパンチでは内部に届かない。企業側とアート側の考え方、組織のあり方の違いを踏まえてパートナーシップを結ぶことのできる個人を核に、お互いのメリットを擦り合わせていける場所を探し続けるしかないのかもしれません。そこから企業にとってのアートの価値や、アートにとっての企業の位置が変わることを期待するのは、甘いのでしょうか。さて、このコンテンツは本稿で終了となります。ページ数に縛られないホームページの利点に存分に甘えて、毎回長文となってしまいました。それでもお読み下さったみなさま、そして、時には2時間以上にも及ぶインタビューにご協力いただいたアーティスト、企業の方々に心からお礼を申し上げます。いずれまた、みなさんとアートやそれを包み込む社会のおもしろさについてお話できる機会があることを楽しみにしています。

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