日々是ダンス。踊る心と体から無節操に→をのばした読み物 |
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《京都の暑い夏 Hot Summer in Kyoto》講師インタビュー Vol.5
聞き手:宮北裕美
翻訳&インタビュー構成:森本万紀子 [dance+]
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ミエ・コカンポー (フランス/パリ)
豊富なダンス経験に基づく確かなテクニックと音楽的資質に恵まれ、大胆かつ女性らしい繊細な振付が魅力。'89年、ジュリアード音楽院を経て、ダニエル・ラリューのカンパニーなどで活動。フィリップ・ドゥクフレのカンパニーでは定期的にレッスンを提供している。'98年には自身のカンパニー"K.622" を設立。秋吉国際芸術村でのレジデンス及び、名古屋、横浜など日本での公演・ワークショップの活動を積極的に行っている。'02年、フランス政府派遣アーティストとして関西日仏交流会館Villa九条山に長期滞在。(提供:京都の暑い夏/photo: SANDRA PIRETTI)
+ 今回のワークショップで面白かったことは何ですか?
ミエ 去年は一大イベントで、大きなエネルギーがあった。たくさんの講師がいてショーイングもたくさんあったでしょ。去年このフェスティバルが講師たちと共に種を蒔いて、今年は実った果実を味わってる感じね。毎年ダンサー達のクリエイティビティ、責任感、意識、自由、個性などがだんだん“普通”になってきた。ダンス・プラクティスの中で。
前は形にかたまってた。形を守っていて、自分で感じたり、体でわかるってことに目を開けてなかった。今はみんな本当に普通になってる。統合されてきてるっていうか。毎日ダンス・プラクティスに入ってるから、ジャンルとかスタイルの話をしない。それだけですごいと思うの。ダンスのやり方が変わってきた。
+ どんなダンサーを良いダンサーと思いますか?
ミエ 意識と可能性/適応力(availability)、開かれていること、脳の柔らかさ、超意識。意識が一番。身体を意識していると何でもできると思う。意識していないダンサーは形、形、形で、いいダンサーはどんなスコア(振り付け)でも自分で味わって、自分からその中の動きで遊べる。
インプロでも意識は大事だけど、振り付けを踊る時の方がそれがよく見える。動きを楽しんで、動きを変えて、自分とよくつながること。やる気、パッション。ダンサーはその2つがないと難しい。
+ 舞台での緊張をどう利用したらいいですか?
ミエ 歳とともに、よりコントロール出来るようにはなったけど、緊張は大きくなってるの。変よね。私、舞台の上では緊張すると震えるの。だから床にどう自分を調整していくかとかに集中するようにしてる。呼吸したりあくびしたりね。そして舞台に上がれば、そこでやらなくちゃいけないことに集中する。(そこで起こることに)応えるためには、オープン・マインド。何が起こっても私は準備オーケー。
だから舞台に上がる前にギリギリの状態に持っていくようにしてる気がする。それから緊張を流してあげる。最近はいつもギリギリだからメイクする時間もない。緊張する時間を消したいから。そのだらしのないところが、逆にコントロールの仕方だと思ってる。
+ 京都の暑い夏のユニークだと思うところはどういうところですか?
ミエ いつもすごいあったかい。情熱のある、良いレベルのダンサーが集まるフェスティバル。日本中から来てるから、生徒たちもお互い知らない人同士でしょ。だからすごいエネルギーが特別。すごくあったかいっていうか、いい感じのライブ感。京都も美しいでしょ。先生達も美しいことしかやらない。とろーっとしてるし。大阪、京都はすごくあったかい。街の賜物ね。
+ 京都の暑い夏と関わりを持ったきっかけは?
ミエ 2002年にヴィラ九条山にいた時に、タカオ(注:タカハラタカオ)がエクスチェンジ・プログラムを持ちかけてきた。その時に京都アートセンターでワーク・イン・プログレスを見せたくて、京都で公演やろうと思ったのね。そして森さんにコンタクトを取って、いいってことになって。それなら、暑い夏のワークショップで教えて下さいって、エクスチェンジみたいなことになって。それから3年経って、去年坂本さんと森さんが「来て下さい」って。おもしろいでしょ。それでまた「来年も来て下さい」って言われて、たぶん日本にくるからちょうどいいってことになって。その後にまた来ると、前の年の影響があるでしょ。だからそれを見たかった。
+ 自分の身体管理はどうされていますか?
ミエ 煙草も吸うし、お酒も飲むし、あんまり寝ないし……。書かないで! やだ、恥ずかしい。
+ 「書かないでって言いました!」って書きますね。
ミエ ハハ、いいよ。これはね、愉しみの部分。ヨガ、ストレッチ、フェルデンクライス、水泳、山登り。ダンス・クラスは週に1度だけ。たまに2週間に1度だったり。ピーター・ゴスのダンス・クラスを受けてる。
ダンサーにとって一番怖いものは、バランス、強さを失うこと、まっすぐ立つこと。正しく立つことって、すごく難しい。その3つが強ければ、踊るのは楽だと思う。実際、立つことってそんなに自然なことじゃないんだよね。
私ね、16歳くらいの時にすごい落ち込んだ。「私は誰?」って。それまでは色々なテクニックやって、すごくいいこともやったけど、ダンスに自分を全部あげちゃったから、自分の生活はそれだけ。すごいしんどい。それで「step x sept」っていう作品を創ったのね。作品はただ立つという人が何人かと、歩く、歩いて円を描いて、他と出会う。それは人間に限らず、対象とどう関係をもっていくか、って感じの作品。それでまただんだん動きだした。でも立つ/歩くってのはものすごい動きだと思う。それを味わえれば何でも楽しめるよね。
(2006年4月25日 京都)
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