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Books Archivesは「声」をキーワードに現代文学への開かれたアプローチを試みるウェブ放送アーカイヴです

 
Books Archives Vol.2
「吹雪の星の子どもたち」山口泉著(径書房刊/1984)第二章・夜の始まる家から

すっかり日が暮れてからたどりついた家は、様子がどこか違っていました。
胸騒ぎを覚えるチエーロは、あらたまった両親の様子に、
今夜が旅立ちの日だと知ります。
吹雪の星の住人は皆だれもが、一生に一度、冬の一番寒い日に、
旅立たなければならないのです。




ブックスアーカイブスのCDを借りて、自宅で聴いてくれた視覚障害のKさんから
メールが届いた。
彼女は20歳で失明、芸術大学を休学して生活訓練をうけ、昨年復学して作品づくりと自分らしく生きるベテラン障害者を目指して頑張っている女の子。
障害者が自分らしく、というのは困難なことで、例えば視覚障害者の仕事は鍼灸か電話交換などの職種に限られているようだ。これ以外の道をのぞもうとすると、多くの「前例がない」壁がまちうけている。
彼女はアーティスト志望である。
障害があろうとなかろうと、アーティストとして仕事をしていこうとするのは大変なことには違いないが。
ひきこもらず、外にでていくには、集中力と体力、精神力を要する。彼女が日常的に集中力をそがれるのは、世間の無神経だ。
白い杖をもつ若い女性に向ける好奇や同情や余計なお世話。
それらと闘おうとする彼女の姿は頼もしい。
またそれを聞くたびに、わたし自身がそういった偏見をもっていないか考えさせられるのである。
そんな彼女も、時には食欲不振や不眠になるほど、ストレスをかかえる。
言っていく先のない苛立ちや悲しみが、ひとりの夜に積もる。
彼女はブックスアーカイブスのCDを順々に持って帰っていて、疲れていても眠れぬ夜にplayのボタンを押すそうだ。
物語を追いかけているうちに、不思議と眠りに誘われるらしい。
ブックスアーカイブスがすこしは役立っていると聞き、わたしはとてもうれしかった。
不眠対策は羊を数える以外にもたくさんある方がいい。
先日ブックスアーカイブスのCDカバーに点字シールを貼ってもらった。
視覚障害のある方に聞いてもらいやすいように、すこしずつだが準備をしている。
CDは無料で貸し出しているので、ぜひ多くの方にご活用いただきたい。