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ネガとポジ 平加屋吉右ヱ門
 芝居とダンスのコラボレーション。二つの作品を途中休憩を挟んで連続して上演する。
 初めは一人芝居。上演前の諸注意かと思って聞いていると、そのまま舞台が始まっている。一人の女優の、舞台が始まるまでの時間が淡々と進む。同時にその女優の背負っている家族や元の恋人など、舞台に立つまでの、自分の人生に対する整理の仕方が語られる。彼女は、自らに対しても自分を正当化することで、やっとこの場所に立っていられる。
 ダンスの前、舞台の準備のために、一度全員が会場を出される。地下の劇場から地上への階段を上がる。休日のオフィス街は、人気の無い道路が真っ直ぐに続く。向いにある喫茶店の灯りにホッとさせられる。十五分ほどで準備がすみ、階段を降りた。会場へ入った私達は、今まで客席として座っていた雛壇が舞台に変わり、反対に舞台として演じられていた場所に、小道具としても使われていた椅子が、客席としてきれいに並べられているのを知る。
 ダンスが始まる。赤いドレスを着たダンサーは自分を「チェリスト」と呼び何かに追われながら雛壇を動き回る。激しく「壁」にぶつかり、ドアを抉じ開けながら、次々と部屋を移り、執拗に追いかけてくる何かから、逃れる。このパントマイムを見ると、「ここに壁があります」という月並みなものと根本的に違うものが感じられる。体と壁の軋む音が聞こえる。ぶつかった時に飛び散る汗が見える。
 コラボレーション。一緒に作品を作るだけでは、作品の味付けが増えただけに過ぎない。しかし、この二つの作品は、いくつかのテーマと材料を決めて、その中でお互いの表現方法を使い競い合っている。開演前の時間。トルソ。お花。しかし同時に全く対照的な設定もされている。服の色、白と赤。体の動き、静と動。生き方と逝き方。箱を積み上げるように作られていく一人芝居。空間をくり貫きながら自分の世界を作るダンス。
 この二つの作品が、実は一つの作品だったと気付いたのは、舞台を観てから一週間も経った通勤電車の中だった。まさにアリス零番館−ISTの柿落しに相応しい作品だったのだ。

キーワード
■コンテンポラリーダンス ■柿落とし ■一人芝居
DATA

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