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お茶の間の人気者は、優れたバイプレーヤー 栂井理依
 奇人変人をゲストに招き、密かに笑いものにする「奇人たちの晩餐会」。しかし、ホストである出版社経営の大橋は、妻に逃げられ、ひょんなことから、ゲストに招いたはずの田口に、助けを求めることになる−。
 原作者でもあるフランシス・ヴェベールが自らメガホンを取った映画「奇人たちの晩餐会」も、陣内孝則主演によって舞台化された「おばかさんの夕食会」も、大成功を収めたこの作品の日本での3度目の舞台化は、お茶の間の人気者・明石家さんまを迎え、実現した。

 インパクト重視のギャグや単なる饒舌にとどまらず、その場の空気を瞬時に読みとってボケとツッコミを自由に繰り出し、「笑い」を生み出す「明石家さんま」。対するのは、どこまでが天然なのか意図しているのか全く読めない、見事なボケっぷりの「ジミー大西」だ。この芝居の成功は、この二人の対決の妙にかかっていた。

 大橋(さんま)のためを思い、なんとか妻に戻ってきてもらおうと、協力を買ってでる田口(ジミー)だが、その努力努力がすべて裏目に出てしまう。愛人と妻を勘違いし、せっかく帰ってきた妻を追い返すわ、妻の元恋人であるが故に絶交していた大橋の親友・黒川を呼び寄せるわで、大橋を翻弄する。
 そして、また、ジミー大西自身も、わけのわからないギャグを大声で叫び(本人は、ギャグと思っていないのかもしれない、とすら思ってしまう…)、しどろもどろの台詞を繰り返すという天然ボケを爆発させ、ツッコミを入れようとする明石家さんまを翻弄する。そして、意図しない対決が、客を笑いの渦にひきこんでいく。

 しかし、客が、田口の「奇人」ぶりをばかにすればするほど、大橋の翻弄ぶりを笑えば笑うほど、おそらく明石家さんまは、その仮面の下で、したたかに、その先にあるものを見つめている。
 大橋が、田口を密かに「ばか」扱いしていたことがバレ、哀しむ田口。そして、哀しみながらも、最後の最後に、妻に向って、真摯に大橋の弁護をする田口−。
 「ばか」の印象で塗り固めれば塗り固めるほど、それが剥がれたときには、田口と言う人間の純粋さが光り、「笑い」が緻密に積み重ねられていれば積み重ねられているほど、それを崩したときには、滑稽な哀しみが生まれる。大橋は、杓子定規には計りきれない人間というものの魅力を知り、自らの軽率さを思い知るのだ。

 TVで見かける明石家さんまの「笑い」も、会話で、ぎりぎりまで緊張の糸をひっぱって、ぴんとはじく、といった印象のものが多い。そのように、明石家さんまは、「笑い」の生み出し方を知っているだけでなく、客の心の惹きつける術も知っているのだろう。

 そのため、そんな明石家さんまに今回、課せられていたのは、その自分の度量の中で、どれだけジミー大西を自由に泳がせられるか、客にどれだけジミー大西をばかにさせるか、自分がどれだけそのばかに翻弄されるか、という見えない課題でもあったように思う。そして、それが成功したからこそ、この芝居は成功したのだ。

 そう、自由自在に「笑い」を生み出す明石家さんまという人は、同時に優れたバイプレイヤーでもあったのである。

キーワード
■コメディ ■笑い
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