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薪能は雨天中止です 松岡永子
 毎年恒例、生國魂神社での薪能。

 篝火に照らされた幽玄、といったって、舞台の照明は蛍光灯。マイクを使うから、変な音を拾って間抜けなこともある。密度、集中度の点では室内にかなわない。
 しかし。蝉がシャワシャワ鳴くなか、袖吹き返す風、が本物というのは野外ならでは。夕暮れ、空の様子が変わっていくのも見られる。ラブホテルの看板も見えるけど。
 それに何といってもリーズナブル。半能二つに能二つで三千円(当日五百円増)。別に全部見なくてもかまわない。疲れたら、休憩所にはお抹茶席もある。

一日目の番組は
『絵馬』(半能)
『田村』(半能)
『魚説法』(狂言)
火入れ式があって
『百萬』
「仕舞(名場面の舞)二番」
『一角仙人』

 開始の五時はまだ暑く、客席は日盛り…なんだけど曇ってきた。正面席はほぼ満員。
まず、榊を手にした神官による舞台のお払い。これも、演劇的所作だと思う。

『絵馬』も『田村』も舞が華やか。

 薪能、特に半能は、芝居というよりダンスを見にいくときのようなつもりでいた方がいいかもしれない。
 それに能を見るときは予習しておいた方がいい。「ラストは話さないでください」という映画もあるが、能は、あらすじを知って細かいところにはこだわらない方が楽しめる。言葉を追っていると全体が見られない。その気があるなら本を読んでもいいけれど、面倒くさければチラシに書いてあるのでも間に合う。

『魚説法』に、これが私の造ったお堂だ、といった台詞があり、演者は生國魂さんの社殿の方を見る。「立派ですねえ」(実際は、荘厳、と表現)。うん、まったく。なんか可笑しい。

 市長挨拶代読のあと、火入れ式。松明で篝火を点す。この辺で帰る人も多い。ここからが面白いと思うんだけど。

『百萬』のやわらかい緑色の衣装は、一番季節に合っていたかもしれない。篝火も熾んに、最も薪能らしい映像が撮れるとき。行方不明になった子どもを探す母親、なんだから、いわゆる妙齢の女性ではないのだろうが、すがすがしい爽やかな舞姿。最後に子どもが見つかって、つれだって帰るからかもしれない。

最後『一角仙人』。
 龍神と争って勝った一角仙人は、龍神を岩屋に閉じ込める。雨を降らせる龍神がいなくなったため日照りが続き、困った皇帝は仙人のところに美人を送りこむ。俗っぽい感情を持つと神通力を無くし、龍を閉じ込めておけなくなるからだ。 歌舞伎の「鳴神」と同根の話。歌舞伎だと姫君の胸元に手を入れたりするが、一角仙人はもちろんそんなことはしない。一緒に酒を飲んで舞うだけだ。しかし神通力はなくなる。気の毒に。
 旋陀夫人の舞につられて、ふらぁっと立って真似をし始める仙人は、カワイイ。登場時、庵に座っている、こわくてちょっと暗い姿との対照が面白い。すぐに上達して夫人と一緒に舞うあたり、やはりただ者ではない。
 封印が解け、岩屋から飛び出してくる龍神は子方。二人(?)の龍神のうち、小さい方はポーズを決めるだけでもいかにも可愛らしい。大きい方はもう一人前で(中二だそうだ。実にしっかりしてる)、くるっと跳んでダンと座る動きも決まって、かっこいい。

 龍神が解放されるためか、途中で雷鳴も聞こえてきた。本当は開演中に降っては困るんだけど、龍神の舞姿に雨を期待してしまう。雨乞いとしても威力ありそう。自然の演出は、すごい。人間には真似できない。

キーワード
■野外 ■能楽 ■古典芸能
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