(「美術館の遠足」・・・97年から10年間、西宮市大谷記念美術館で1年に1日だけ行われる展覧会。)
アサダ:そろそろインタビューも終盤ですね。ところで今年で「美術館の遠足」はラスト?
藤本:うん。終わり。
アサダ:今年も何も変わらず?
藤本:97年にスタートしたんですよ。一番の目的が10年間続けることだったので、ゴールがみえてきたという事において、僕のなかで10年というのは大きなスパン。自分だけでやっているわけじゃないから。美術館と僕と観客の人で10年間プロジェクトを続けてきたというのが遂に完成するということでは特別な意味を持っています。だからちゃんと完結させるということは大事だと思っていますよ。でも、人が予想しているような終わり方はしない。
アサダ:(笑)。 僕の記憶が正しければ、去年の12月の第9回目の時に「来年は僕がやりたいことをやりたい」って言っておられたような...
藤本:そうですね。言いましたよ。
アサダ:何が行われるんだろうなと。気になりますね。
藤本:最後くらいは自分がやりたい事をしたい。唖然とされるかもしれない。しかも今年、5月27日なんで。
アサダ:5月ですか!?
藤本:今もう準備に入っていて。何故かみんな秋だと思っているんですよ。気づいたら終わってたとか。色んな意味で、ゲームみたいなものだから、どう裏切っていこうかって考えると面白くなるんですね。まず自分が突き動かされないと、人には通じないんですよね。だから失敗する可能性は大なんですけれど、やっぱり、そう決めた以上やりたくてしかたがなくて。
色んな意味で10回目なんでね、失敗してもね。その後のことを考えなくてもいいという意味でも10回目なんです。
アサダ:終わってみたら「すごい10回目やったな」っていう...
藤本:でも、今は僕自身が考えなくても色んな面白い事を考える人が多くなってきて。一緒にやりましょうという人もいて。
アサダ:見に来てくれる人が毎年毎年その人自身の関わり方が変わってきてますよね。
藤本:10年やっているとね。時代が変わったなというのがよくわかるんですよ。
一番何が変わったかというと、観客の意識がかわったと思う。観客のアートに関する意識がね。関係者も変わってきているし。表現の形やメディアの出方であるとか。それからマーケティングとかも。
僕が考えなくても、僕が考えたようなことを考える人が出てきて。面白いのは、「こういうテーマでこういうような展覧会をしませんか?」と言ってくる学芸員の人がいること。僕自身にとっては「そう考えて当然」というようなことが多くて、「じゃあやりましょう」となるわけで、そういう機会が増えてきていて、今すごく面白いです。
アサダ:では、今日はどうもお疲れさまでした。ありがとうございました。今年も「美術館の遠足」伺いますね。
藤本:お疲れさまでした。
於 CAPHOUSE 藤本由紀夫氏アトリエ |