日々是ダンス。踊る心と体から無節操に→をのばした読み物 |
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《京都の暑い夏 Hot Summer in Kyoto》講師インタビュー Vol.2
翻訳&インタビュー構成:森本万紀子 [dance+]
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ヴェロニク・ラルシェ (フランス/マルセイユ)
運動療法、整体、キネシオロジーの長年の研究を採り入れた彼女のレッスンは、骨格や筋肉の構造を深く意識させると共に、優れたウォーミング・アップのテクニックとして高い評価を受けている。パリ・オペラ座、ダニエル・ラリュー、バレエ・プレルジョカージュなどのカンパニーでプロフェッショナルダンサーにコンテンポラリーダンスとキネシオロジーを指導。日本でも多くのダンサーに影響を与え、DWL講師としても全国で引っ張りだこ。すっかり人気の定着したワークショップ講師。(提供:京都の暑い夏)
+ 今日のワークショップで面白かったことは何ですか?
ヴェロニク 今日は、本当に特別な日だった。とってもエモーショナルなクラスだったの。皆それぞれの身体を深く感じて、理解していた。身体の内部を深く、細部に至るまで。まさに私がこのクラスで探そうとしていたものを、生徒たちそれぞれが理解してるのが分かったの。それは本当に……、魔法みたいだった(笑)。9日間を経て、私たちは一緒に何かを見つけたの。私にとっては、今朝のクラスは本当にダンスだった。身体の全て、心、他の人々……。素晴らしかった! そうやって私はいろいろなやり方を発見していっています。それが私の仕事なの。
+ どんなダンサーを良いダンサーと思いますか?
ヴェロニク 自分の身体をよく知っていて、たくさんのことに耳を傾け、受け入れることの出来る人。そうすれば何でも出来るわ。周りにもたくさんのものを与えることが出来る。それは舞台の上でも、クラスの中でも、インプロヴィゼーションにおいても、人生においても。もちろん身体だけじゃなくて頭の方もね。そして謙虚であり、同時に強くあること。私にとってその2つは同じことなんだけど。
+ 舞台での緊張をどう利用したらいいですか?
ヴェロニク いつも舞台前のクラスを受け持つんだけど、それは呼吸や、シンプルなテクニックだけの静かなクラスです。ストレッチをして、自分の中心と重力を探って。そうすれば舞台に出て行ける。
私は一度も舞台に立ったことがないの。私の人生はダンスを教えること。コンテンポラリーのクラスを受けたことも一度もないのよ。でもこの20年間ずっとカンパニーに付き添って歩いてきたからだと思うけど、時々、彼らが舞台に乗ると、客席にいる私も舞台で起ることを一緒に生きることが出来るんです。だって私は彼らをよく知ってるから。だから時々は緊張するけど、でもそんなにでもないわね。
+ 自分の身体管理はどうしていますか?
ヴェロニク といっても私は毎日踊るわけじゃないでしょ(笑)。ストレッチしたりはするけど……。特になにもしないわね。身体に良い食べ物を摂るように心がけてはいる。でも煙草は吸うし、お酒も飲むし。そりゃ身体によくないってことは分かってるけど。
+ 心の栄養ですよね。
ヴェロニク そうそう(笑)。
+ 京都の暑い夏のユニークだと思うところはどういうところですか?
ヴェロニク ヨーロッパ、アメリカ、韓国……、たくさんの講師がいろんなところから来ていること。私にとっても違う国のいろいろな講師の仕事を見られるのはいいことだし、受講者にとっても非常に面白いことでしょう。様々なタイプのコンテンポラリー・ダンスを発見できるわけだから。
面白いのは京都ばかりじゃなくて、6,7年前に初めて訪れた松山を皮切りに、高知、福岡、広島、今年初めての仙台、精華大学、そして大津のすっごく素敵なバレエ学校にも行くようになったんだけど、何が面白いって、そういう土地には最初コンテンポラリー・ダンスのクラスなんか全然なかったのよ。ジャズ、バレエ、タップとか、そのくらいよね。それが今ではコンテンポラリーのカンパニーが出来ていたりする。
例えば松山。私はほとんど毎年、受講者たちのパフォーマンスを見ることが出来るの(笑)。松山大学ダンス部は本当に素晴らしいわ。今年で3年目だけど、ダンス部の学生さんたちは全員が私のクラスをとってる。それにプロのダンサーや教師たちも来るのよ。以前私と一緒のワークをして、それを続けたいって来てくれるの。卒業生たちも戻ってきたりする。本当に素晴らしい。
+ 京都の暑い夏とかかわりをもったきっかけは?
ヴェロニク フランスのカンパニーのミシェル・ケレメニスと一緒に仕事をしていて、日本を含むアジア各国のツアーをしていた時に、裕子と公成に出会ったのよ。私はツアー中はいつも滞在地のいろんな振付家と一緒に教えているんだけど、この時の裕子と公成との出会いから、その後彼らに毎年招聘されるようになって、今年でもう12年目。頭の中には毎年ここのスケジュールがちゃんと入ってるわよ(笑)。
裕子が言ってたんだけど、サンチャゴはこのフェスティバルのお父さんで、私はお母さんだって。毎年、ここへ戻ってきた時、以前私のクラスをとっていたダンサーがまた受講してくれて、そしてまた一緒に進歩していけるのは、とても素晴らしいわ。ダンサーたちのことは、みんな覚えてるわよ。
+ そして毎年上達していると。
ヴェロニク ええ。なぜかというと、私のワークは身体に深く入っていくことだからだと思う。皆1年間それを続けることが出来るから、私が戻ってきた時は、そうね、初日は前の年と同じくらいのレベル。その後一緒に進歩していくのよ。上達しているか、それとも同じレベルか。でもそれ以下に戻っているということはない。
年を経るごとに、私自身もより深くこのワークに入っていっている。おそらく私が日本の身体や空間、特質について学んでいるからだと思う。最初は通訳をつけるけど、すぐに通訳はいらないって言うわね。だって私たちは身体で会話するんだから。だから私も誰もが理解できるように正確でいなくちゃいけない。日本語でやるのは楽しいわよ。それに私、日本のことが大好きだから。
+ 最後に若いダンサーへのアドバイスをいただけませんか?
ヴェロニク 開かれていること。全てを受け入れること。良いことも悪いことも。だって世界中に良い先生しかいないわけではないじゃない?
そして自分自身の身体を理解すること。そうすれば自分に何が出来るか、どの道を辿ればいいか分かる。
痛みは絶対にダメ。ダンスは喜びなの。もちろん私たちは学ばなければならないけど、痛みを伴ってやることではないわ。ストレスもダメ。そういう感じのものは全部ダメよ。ダメダメ。喜び。静かに。周りを見て、感じること。
(2006年5月6日 京都)
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