日々是ダンス。踊る心と体から無節操に→をのばした読み物 |
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27 京都の暑い夏2007ドキュメント Vol.2
《京都の暑い夏 Hot Summer in Kyoto》講師インタビューVol.9
インタビュアー:メガネ [dance+]
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イニャーキ・アズピラーガ (ベルギー/ブリュッセル) 身体と身体が限界において対峙する際に生まれる測り知れないエネルギー。その未知のエネルギーを循環させその渦に人を巻き込む彼のクラスで、動くことへの衝動を抑えることはできない。バスクフォーク、クラシックバレエ、モダン、コンテンポラリー・ダンスを学び、ダンサーとしてヴィム・ヴァンデケイビュス、マチルド・モニエ、スペイン国立バレエ他、多くの一流カンパニーの作品に出演。ブリュッセルを拠点にヴァンデケイビュスの振付アシスタントを勤める他、ニード・カンパニーなど多くのヨーロッパのカンパニーにレッスンを提供している。パフォーマー、WS講師として数々の経験に裏打ちされた魅力溢れるレッスンが好評。(提供:京都の暑い夏)
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+ どんなダンサーを良いダンサーだと思いますか
イニャーキ この質問は何なんだろう。僕はダンサーを好きになることは出来ても、何が良くて何が悪いかなんて分からない。「良い」とか「悪い」っていうのは、デリケートだし危険な話題だよ。モンドリアンはピカソよりも優れているか? だから「良いか悪いか」じゃなくて、「好きか好きじゃないか」っていう話になるね。
しかも僕は、あるダンサーを自分がなぜ好きになるのか分からない。本能的なものだよね。技術的にどうこうという問題じゃない。時に僕は技術を持たない人を好きになったりするし……。そうだな、オーラと言えるかもしれない。舞台上とか、隅っことかにいる人を見て「ワオ!」って思うような。それをどう定義すればいいのか、やっぱり分からないね。
+ 舞台での緊張にはどう対処したらいいですか
イニャーキ 観客を忘れることに尽きるね。パフォーマンスの前にはリハーサルをしているから、自分が何をすべきかは分かっているよね。ステップもそうだし、そういった自分のすべき仕事に、自分の部屋にいる時みたいに没頭するんだ。昨日ビギナーのトークでも言っていただろう。ある女性が、あまりにもたくさんのすべきことがあって、自分で何をすればいいのか分からなくなるって。で、彼女はとりあえずやり始めることにした。そうしたら「メソッドも忘れてしまって、結果も、自分が良かったのか悪かったのかも忘れてしまった」ってね。
観客を見てしまう人もいるけど、僕は見ない。別の女性も、「(ワークをしながら)『あ!』と思ったその瞬間、周りで見ている人たちも息をのむのが感じられた」って言っていたよね。その人はそこではじめて、みんなが自分を見ているということに気づいたんだ。それまでは、自分がすべきことに没頭していて、完全に忘れていたんだよね。
+ 身体のためにどんなことをしていますか
イニャーキ オステオパシー に行くくらいかな。1年に3,4回ね。
+ 京都の暑い夏とかかわりをもったきっかけは?
イニャーキ 僕がウィーンのIm plusダンス・フェスティバルで教えていたときに、ここのスタッフの(有吉)睦子さん受講していたんだ。後から彼女が電話してきて、「このフェスティバルに来ないか」って。2004年に初めて来て、2005年と今年だね。
+ 今回のワークショップで面白かったことは何ですか
イニャーキ 3年目にして、ここにいる人たちの進化が見えるよ。本当に。もしかしたらみんなが僕のことを知るようになってきたからかもしれない。何人かは前よりも面白さを見いだしている。こうなると、よりまとまりのあるグループが必要になってくるね。
面白いフィードバックもたくさんあったよ。特に面白かったのがビギナークラス。アフタートークで耳にした言葉だけじゃなくて、ワークショップの中でのリアクションもね。ビギナーたちのショックはとても大きくて、僕が提案したことと、みんながどの程度準備してきたことの落差が、みんなの反応に現れていたよ。
ビギナークラスでの変化は僕にとっても驚きだった。でも起こり得ることだよ。僕は斜に構えて探りながら見ている部分もあるんだ。クラス中みながステップをキープしている時に、僕は「OK、扉を開くキーになる瞬間はどこだろう?」って見ていることができる。一つのシンプルなアイデア、ちょっとしたことが全員をつなぐムードをもたらすから。今回、僕は過剰にたくさんの情報を与えてみんなを混乱させてみた。うまくいったよ。
+ 受講者たちに伝えたかったことは何ですか
イニャーキ アフタートークでは、僕からみんなに質問してみた。人の生活やパーソナリティ、家族やパートナーや友達や路上でといった周囲とのかかわり、人生に対する観察、自分がどのように行動するか、といったもろもろのことが、このワークショップの経験で変化を被ったか。なぜって、僕がやったのは人間にかかわることだから。この投げかけは、ダンスの技術だけではなく、人間という存在にかかわることだからだよ。
僕のワークショップの定義は、パートナー・ワークでもある。だから僕はパートナー・ワークに焦点を当てているんだ。そして日本の人たちにとって、触られたり、自分の感情を身体を通して他の身体に見せていく、ということがいかに難しいことかがよく分かる。それがここですべき仕事の中心になるね。
(2007年5月6日 京都)
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