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2月1日までグラフメディア・ジーエムで奈良美智展『S.M.L.』を開催している。この展覧会は、まず、グラフが奈良さんに制作する環境を提供し、実際に会場で滞在制作を行うことが作品全体の中では重要な位置を占めている。その滞在制作の模様はプレ・オープン期間として公開され、ジーエムのカフェスペースに作業内容を記した壁紙新聞や『Today's Special』としてその日に描いたドローイングなどが会場とカフェを隔てている仮設の壁面に掲示された。制作真最中の奈良さんにグラフでの生活や環境、奈良さんのライフスタイルなどについて聞いてみた。

「ドイツの時の暮らしはねぇ…。まず、オレは車も持ってなくて、ずっと自転車で…。ドイツには12年間住んでたんだけど、炊飯器なんかを買ったのも8年目ぐらいで、電話つけたのが4年目かな(笑)。みんなが『海外』って聞いたときにイメージするのと全然違う暮らしでさ。」

展覧会を開催するにあたり、しかも今回はコラボレーションの様相も強いということもあって、僕は奈良さんのアトリエを訪れることになった。完成された絵だけでは、なかなか感じることのできない、見せることを前提としていない環境を見たいと思ったからだ。東京の都心から1時間半ほど電車を乗り継いでたどり着いた片田舎を思わせる駅。ガランとしたロータリーにルーズソックスを履いた女子高生がたむろしている。ほどなく、奈良さんが車で迎えに来てくれた。埃まみれの茶色い国産車で。奈良さんのアトリエはプレハブのような建物だった。雑然としたアトリエと2階にあるガランとした住居部分。何故か懐かしい感じがした。

「今日で大阪は5日目だけど、昨日用事があって1日だけ東京に戻って、今日、また大阪に来て、自分の作業スペースに入ったら、なんか、戻ってきたっていう感じがして。自分が制作しやすいように自分の家にあったいろんな小物や壁に貼ってあったハガキなんか持ってきたんだけど、自分が普段制作している場所が大阪に移動したみたいな感じ。こういう風に描いてるんだっていうのが感じてもらえたら嬉しいな。」

展示が完了し無事レセプションを終えた翌日、奈良さんは大阪を後にした。今では展示物となった自分の生活との別れを惜しんでいるのか、東京へ帰る時間になっても展示された小物の位置をいつまでも動かしていた。


radio graf guest: 奈良美智