雨森:初の舞台演出作品となった『もっとダーウィン』の第一部の作品は京都造形芸術大学の授業を通して学生といっしょにつくられたんですよね?
高嶺:そうです。順序で言えば、まずアイホールのプロデューサー、志賀玲子さんから「アイホールの‘Take a chance’という枠で、舞台の演出をやってみませんか?」という投げかけが先にあって、その時点では、学生と創るという話ではなかったんです。正直なところ、アイホールでの公演を受けたはいいけど、人を集めるのも、集まった人が練習する場所を探すのも大変で、実際にどこでどうやって創っていくのかという物理的な問題もあって。それでちょうど、京都造形大で授業を持っていたし、授業でつくったものをベースにして、そこからの発展形でアイホールに向けて仕上げる、というつくり方にしたらどうかと。学生にとっても、学外で発表するいい機会になるかなと思って。
雨森:では最初にアイホールの話がきたときは特に学生といっしょにという条件ではなかったんですね。
高嶺:そうなんです。なので最初にそのことを志賀さんに話したときには、学生レベルを求めているわけではない、と反対されたんですけど。「ぜったい学外にも通用する作品にしますから」って言って、納得してもらいました。
その頃、前後して松室美香さん(二部に出演したダンサー)と話をする機会があって、「私もいっしょにやりたい!」って言われて。4月にはすでに
一部と二部の二本立てしましょうかって話になっていました。一部『海馬Q』は学生といっしょにつくったもので、二部の『Miss
rim』は、もとNoismのダンサーの松室さん、メディアアーティスト前林明次さんとのコラボレーション作品です。
雨森:ではまず一部の方からお聞きしたいと思います。約3ヶ月でしかも、学生と一から舞台をつくり上げるというのは、かなり大変だったと思いますが。
高嶺:もうね、最初はぐちゃぐちゃでした。。。授業始める前にある程度プラン立てようって思ってたけど、去年の2月から3月にかけてずっと忙しかったのもあるし、どうスケジュールを立てていったらいいのか全然分からなかったから、とりあえず授業が始まってから、その場その場で考えていったんです。最初の授業で、「僕は大人数の舞台演出をやったことのない人間で、だからほんと試行錯誤で進んでいくと思うし、なにがどうなるかはまださっぱりわかりません。みんなの意見も取り入れながらいろんなことを実験してみたいと思っているので、一緒に創っていくって感じで進めていきたいです。」というような話をして。
雨森:何人くらい生徒さんは集まったんですか?集まってきた学生は舞台に興味があった人たち?
高嶺:実際に僕の授業を登録してちゃんと履修した生徒は4人、5人くらいしかいなかったんですけど、聴講でいっぱい来て、単位とか関係ない学生が主軸でした。だからおもしろくなかったらどんどん離れていくわけです。最終的に何人になるかっていうのは全然見えない状態。途中で来なくなった子もいれば、おもしろいって噂を聞いて途中で入ってきた子もいて。減ったり増えたりしながら、5月の終わり頃に17人でいきましょうって決まりました。学科としては映像舞台芸術学科というところで、二回生が一人、あとは三、四回生だったかな。学科には、照明とか音響とか含めていろいろな授業があるので、技術的にデキる子もいて、結構、スタッフワークも学生に任せて進めることができました。
雨森:どんな授業をしてたんですか?
高嶺:まず最初に、他の先生はどんな授業をやっているのか、学生に聞いたんです。例えば、太田省吾さんの授業では、ずっと歩くってことをやってます、と聞いて、じゃあ、みんなで歩いてみましょうか、と。「先生、パクりじゃないですか!」って言われながら
(笑) 。
あとね、即興で動いてもらうっていうのを結構やりました。まず、最初は、僕は彼らのことを全然知らないので、彼らが一体どんな人間なのか、どういうことに興味があって、実際にどういう能力を持っているのかというようなことを知るところから始める必要があった。即興で動いてもらうことはその辺りを知るのにすごく有効でした。
雨森:それぞれの能力とか持ち味をみながら作品の内容を考えていくという感じ?
高嶺:そうですね。なんだかいろいろやってもらっているうちに、おもしろい瞬間っていうのがどんどん見えてきて、この子だったらこういうことが出来るかなとか、こんな感じがいいかな、というようなネタだしをずっとやってた感じですね。6月くらいまではずっとそういうことをやってました。
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