実のところ、大橋が率直に語るように「繋がりうる可能性には、全て手を伸ばす」というほどまでに開かれた態度の裏には、この地で同時代の実験的な表現活動を展開していくことは、それほど容易いことではないという状況が横たわる。美術専門の大学がないこと、行政、企業による支援の基盤が整っていないことなどの理由があるが、なかでも顕著なのが、芸術活動に興味を示し、取り組もうという人口の圧倒的な少なさが挙げられるという。
日常へ
そこで、現代美術に関心を持つ若い世代を開拓するための試みが、PRAHA
Projectから美術を学ぶ若者達に企画を提案し、アドバイスする形で行われた「Art Net(学校めぐって出張アート)」である。札幌、帯広の高校の校内に、大学生を中心とした美術学生や若い美術作家が自分の作品を展示するというもので、世代の近い若者達が作者、鑑賞者として学校内という日常的な場所の中で出会うということによって、同時代の表現としての美術を身近な距離で捉え合うことのできる、貴重な機会であったという。以下に大橋のテキストを引用しよう。
高等学校側が期待していた“非日常な刺激”に対して、『Art
net』が志向していた、「高校生にむけて美術は身近な所にあって、もしかしたら校則のなかにも、可能性があるかもしれないよ」と、優しく問いかけて行く様な“美術の日常化”のギャップは、大きかった。
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