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どっちかというと、マシューバーニーの作品は写真の方が好きかな。キマッてるし、ディテールもよく分るし写真の作品として完結している。写真は僕の苦手とする部分で、スティル(写真)が自分で撮れないというのと、スティル的な感覚を持っていない。勉強したいなあと思っているんですけど、映像とはまたまったく別の考え方が必要なんですね。僕が得意とするのはリズムにのせて、映像の切り替わりの効果や演出など時間の流れの中で見せていくということなので、一枚にすべての内容を盛り込むということはあまりしてないんです。全部時間軸があるものになる。マシューバーニーの場合は写真自体で完成しているので、逆にそれだったら写真のほうがいいんじゃないかなと思ったんです。

僕もスティルについて真剣に考えてみたことがあったんですけど、一枚ですべて完結しているものというのが思いつかなかった。ある程度時間の流れがないと。今、自分がやっていることとはまた違った視点でものを捉えないと無理ですね。反対に篠山紀信さんが映画を撮らないのもそういうところなんかなあと思ったりもするんですけどね。

でもだからこそ映像なんですよね。

もともと高校では日本画を勉強していたんだけど、「これはあかん」と思った理由はそこにあるんだろうなあと。一枚では表現出来ない。例えば猿を描いていたとして、ただカタチとして描くだけではなくって、なんでそれを描いているのかっていうのが表現出来ないといけないんだけど、「なんで僕は猿の絵を描いているんだろう?」ってことになって、モチベーションが見つからなかった。..しっくりこなかったんです。対象が「美しい女性」だったとしても同じで、僕が女の人を美しいなあと思うときって、「表情」にぐっとくる時で、それを表現するのに、肌の質感とか背景とか全部入れて、その表情を描こうとするんだけど、1枚の絵の中にその瞬間をとどめるというのは僕には無理だった。映像だったら、その女性の顔をアップで映して、表情の変化を時間軸で追えばいいわけだから、僕にとったら楽なんですよ。でも映像はやっぱりお金かかるし(笑)、1枚の絵や写真で表現出来たらいいなあとは思ってるんです。

まだプランニングの段階です。シナリオと絵コンテはもうすぐ仕上がるんだけど、お金がかかるので、資金繰りをどうするかというところで今止まっていてまだなんとも言えないですね。内容はストーリーのある劇映画です。

ハイビジョンで撮影する予定ということですが、別にフィルムにこだわっているわけではない?

フィルムのことをよく知ってないと、どんな絵になるか分らないからカメラマンに頼らないといけない部分が出てくるんだけど、ハイビジョンだったら自分でまわして、後で、色を調整したり加工して、そっちの方が好きな絵を作れるから。

資金調達はどんなふうに?

普通はいろんな会社、配給会社だったり、広告代理店や出版社とか後々商品化したり確実に儲かるというビジネスイメージが描けるものには出資するんですが、やはりそのめどが立たないとお金出せないんですよね。売れてる小説や漫画を映画化する場合は、本も確実に売れるだろうとか動員数もだいたい想定出来るんだけど、完全書き下ろしのオリジナルのものになったときに、それだけお客を呼べるのか?何で回収するのか?というところが読めなくて止まってしまう。最近は不況のせいもあって、ビデオや本も売れなくなっているし、特に出し渋っているというのもありますね。低予算だったら問題ないんだけど。税金の問題もあって、企業が映画に出資しても会社の資産となってしまうので、経費としては落とせないんです。だから、1億出資したら5千万の税金がかかる。

そうなんですか?? それは税金の制度をちょっと変えないとだめですね..確実に儲かるものにしか出資してもらえなかったら、日本の映画はいつまでたっても伸びないでしょうね。
ちなみに製作費どれくらいかかりそうなんですか?

切り詰めて3億ほど..最初は5億だったんですけどね。

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