中川:今回の公演の特徴として、キノコも初めてだし、そもそもダンスを見ることじたい初めて、という人が多かったということがありますね。ダンスの公演はややもするとダンスをいつも見ている人だけで固まってしまうことも多いから。
豊嶋:「ちがうのにも行こう」って思うようになるかもしれないよね。
中川:そうなんです。それに、アンケートを見るとよくわかるんですけど、grafとキノコの次の公演を希望する人もとても多いです。公演が終わってからもメールが来てて……。
豊嶋:ってことは、すごくおもしろかったんや。
中川:いい公演でしたよ、すごく。遠方からもたくさんいらしてくれたし。上演時間の問い合わせも多くて、それは、その日のうちに帰らなければならないからで、上演時間が例えば2時間あると「のぞみ」に間に合わないということだったりとか。
福永:うれしいね。
中川:うれしいですね。
福永:出口あたりにいると、お客さんの顔が、会場の中は暗くて見えないのが、出口に来ると明るくなってパッと不意に表情が浮かび上がってくるんだけど、みんないい顔してて、その表情が見れただけでも幸せだった。あんな表情、つくれっこないですからね。
中川:上気してる感じでしたよね。ま、暑さもあったんですけど。
福永:そういう表情を見たとき、「ああ、なんか成功しているなあ」
「したんだなあ」って思いましたね。
中川:受付で小冊子を売っていたら、お客さんが帰り際に「すごくよかったです!」って言ってくれたりね。すごく熱く「次回もぜひやってください」って。
福永:観客が自分から、やっている側の人間に「おもしろかったです」とかいうことじたい、勇気のいることだとぼくなんかは思うけど、今回はほんとにそういう声をよく聞いたね。
中川:チケット予約がそもそもメールのやりとりですから、お名前がだいたいわかっていて、受付でご本人だとわかると、「この人があのメールの……」って、一方的に知り合いみたいな感じで。
福永:そうそう、今回、画期的だったのは、個人の女の人が直接、メールで前売り券を販売するっていうシステムでした。
豊嶋:いいねぇ(笑)。
福永:申し込む側もちょっとした一文を書いてくれていて、何百通っていう返信を出す中川さんも負けずに一文、二文くらい書いて、手紙になっているんですよね。
豊嶋:まだメール来たりする?
中川:来ました! だからしばらくメールアドレスを閉じずにおこうって思っているんです。
福永:本当にぼくら、今回の公演で、お客さんと不思議な気の合い方をしたなあって思います。ぼくらスタッフなのに、お客さんがぼくらのこと、気にかけてくれるんですよ。とてもうれしかったです。
ダンスの本編とは関係ないことなのかもしれないけど、こういうこともふくめて、全体として『こんにちは。』っていうひとつの表現にまとまっていたようにも思う。
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