text by 豊嶋秀樹(graf) |
グラフメディア・ジーエムにて10月25日から11月24日まで、編集者である都築響一氏の『ラブホの夢は夜ひらく』展を開催している。この展覧会は、ラブホテルのインテリアを撮影した都築響一氏の作品展示を中心に、実際にラブホテルにある素晴らしく奇妙な家具や、俗に言う大人のおもちゃをも展示している。 展示のために来阪中の都築氏にradio grafにもゲスト出演していただいた。編集者という立場で様々な既成の価値を転覆する都築氏自身のライフスタイルや仕事へのスタンスについて伺ってみた。ホントに勇気出ます。 |
どっちかしかないなっていうのがわかってくる。その一つは、すごい金もらって嫌なことでもなんでもやるか、金はないが好きなことやるか、どっちかしかないんだよね。 僕がやっているのはいろんな所へ行って、面白いもの見つけて、それについてレポートするっていう編集の仕事。世の中の編集者っていうのは、めちゃくちゃ重労働なのに、収入はファーストフードのアルバイトの方が多いんじゃないかっていうぐらいすごく少ない。それだったら、好きなことをやりたいって思うわけ。 好きなことってどういうことかっていうと、TOKYO STYLEっていう本を作ったのが10年前なんだけど、それは、みんなが住んでいる普通の部屋ってどういうのだろうって思ったわけ。それまでのインテリアの雑誌っていうのは、すごい良い部屋を当然出してたわけ。でも、それって誰も住めないすごい良い部屋。正直言って編集者でそういう部屋に住んでいる人なんていない。かっこいい自分の住めないすごい部屋の事を書いて、家に帰ってくると「あ〜あ。」っていう。そういうことをやっていておもしろいのかと思う。 それから、その後、日本の田舎の面白いものをやるっていう、ROADSIDE JAPANっていうのを作ったんです。旅行雑誌なんていうものを見ると、今だったら、「秋の紅葉を見ながら露天風呂」とか、春は、「桜を見ながら露天風呂」なんて、風呂とメシばかりなんだよね。でも、それを10年同じことをやっていて面白いのかと思うわけ。もしそれがつまらなくても月に1000万円くれるならやってもいいと思うけど、月20万円ならやりたくないと思うんだよね。何やったって良いと思うんだけど、対価に見合うことをやんないとダメだと思うんだよね。僕は編集者としていろんな人のいろんな暮らしを見せてもらったことが非常に役立ったと思う。 |
都築氏自身は頻繁に引っ越しを繰り返して生活しているらしい。もちろん、取材のための移動や海外渡航も並ではない。かなりフットワークの軽い生活である。TOKYO STYLEに出てくる部屋も相当小さな部屋だったが、10年前にTOKYO STYLEの部屋に住んでいた若い人達って今はどうしているんだろう? |
都築: TOKYO STYLEを出版した3,4年後に文庫本を出版したんですね。その際に、文庫本化の了承を取るために連絡をとったんですが、もうその時に75%は連絡がつかなかった。今もし、連絡とったら100件近く取材したうち、1人か2人しか同じ所に住んでないだろうね。小さい部屋に住むって言うことは、それだけフットワークが良いって言うことなんだよ。自分なりに家を作り込んじゃったり、いろんな持ち物が増えるとフットワークが重くなっちゃう。 住みかたっていうのは、グラフもいろいろ考えていると思うけど、何種類もある。部屋に住むって言うやりかたもあるけど、町に住むって言うやり方もある。 例えば、この家が好きって言うんじゃなくて、最初にカフェや本屋やクラブでも良いんだけど、そこで飲んで歩いて帰れるってところに住むっていうやり方もある。好きな町が先にできて、その中に居たいっていうだけ。そうすると自分の居るところはベッドルームということで良いわけ。例えば、下の階にコンビニがあれば冷蔵庫もいらない。それで、2年か3年かして飽きれば自分が動けばいい。家って考えると大きく考えちゃうけど、そうじゃなくて、その時登っている山のベースキャンプだと思えば良いんだよ。一生かけて家を建てるって言うのが悪い訳じゃないけど、そうじゃないやり方も提示した方がいいと思うんだよね。 |
オルタナティブな視点、価値、人生。都築氏の仕事や作品を通して知った「生」の世界は相当に非日常的に見えた。こっちが「日なた」であっちが「日かげ」と思いこんでいたけど、実はこっちが「日かげ」であっちが「日なた」なんだと都築氏は教えてくれた。暗闇を照らすサーチライトで「ほら、こっちにも道はあるんだよ。」って僕たちに耳打ちしてくれる。 |
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