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2002年初夏、午後8時25分、北堀江のカフェ。しずかに待つ20名程の観客。ごく自然に演奏が始まる。繊細で小さな音が、耳もとに音楽として入ってくる。Hacoさんの手許の小さな楽器たち(お弁当箱を利用したハンドメイドのエレクトロニクスや、ポケットテルミン)が奏でる音だろうかと、目と耳をこらしている間に、彼女の声が演奏に加わる、途切れ途切れの発音が、詩になっていく、歌になっている。 |
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HACOさんといえば、80年代インディーズ界の伝説ユニット『アフターディナー』の首謀者でボーカル。数人の演奏者を従えていた歌姫は、95年にソロアルバムを出し、それと前後して、自身の音楽性をより深く追求する活動を開始している。
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●ミュージシャンへのきっかけは何だったんですか?
「美術か音楽か進路を迷いながらも、軽い気持ちでスタジオ技術を学べる大阪写真専門学校音響芸術科に進学しました。在学中に習ったテープのスプライシング<何か録音したミュージックテープをカットアップ(切ったりつないだり)して音楽を組み立てる手法>が『美術と音楽の中間のような方法』と思え、楽しくって!『アフターディナー』も、卒業制作などでつくったテープがはじまりです」 |
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●ご自分で、スタジオ技術をお持ちなのですね!
「はい。このスタジオ・メスカリーナ(夙川沿いの築約30年の木造2階建て自宅の一室)には山本精一さんや、ルインズなどを迎えることもあります。コンクリートの建物では出せない音のやわらかさは大変評判がいいんです。あと、とってもくつろげるって‥‥。もちろん自分の音楽もレコーディング、ミックス、マスタリングまで行えます」
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●ホームページを拝見していると、多彩なミュージシャンとのユニットや遠距離コラボレーション、海外ツアー‥‥とありますね。
「ヨーロッパでは、商業ベースでない実験的な音楽フェスティバルが沢山あります。1995年のロンドンLMCフェスティバルをはじめ、2000年にはベルギーのゲントやスロベニアのフェスティバルなどに参加しました」 |
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●実は、一番興味をひかれたのが、『ホアヒオ』なんですが‥‥。
「日本の女性ミュージシャンと97年から始めてます。バンドとして練習し曲を作っていくのでなく、それぞれソロの曲を他のメンバーが支えるスタンス。琴の八木さんや、エレクトロニクスのサチコ.Mさんと一緒に、CDも出しています。今は、八木さん、パーカッショニストの古田マリさんと私の3人でやってますが、別に固定メンバーではなく流動的です」
●どうして女性ばかり?
「どうしてもバンドって、女性ボーカル一人とあとは全員男性という場合が多く、紅一点という感じ。自分のポジションを変換してみたかった」 |
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 | ●ところで『ホアヒオ』ってどういう意味ですか?
「ちょっとした聞き違いから生まれた言葉です。イタリアからのファックスに、ohayo(おはよう)と間違えてhoahio(ほあひお)と書いてあって、あ、この『ホアヒオ』っていいかもって‥‥」 |
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●たまたまの『聞き違い』からですか‥‥。
「聞き間違いって、私達の音楽に入り込む、すごく重要‥‥‥。『人力テクノ』とかいって声真似したり、『ギリシャ風の旋律』とかいって、古代ギリシャ音階に琴をチューニングしたり。私達の音楽って、ちょっとしたオリジナリティが、転換して、変換して、解釈がずれていって、音楽として出来ていく」 |
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