「僕はね、自分が何か表現活動をするってことには昔から興味がないんです。でも、何かを見たり、聞いたりすることはすごく好きなんです。」 グラフメディア・ジーエムがグラフビルの5階からすぐ隣のビルの1階へ移転したときのこけら落としが、このlog-osaka web magazine の主催企画で行われた珍しいキノコ舞踊団の公演だった。僕は、舞台に関してはまったくの素人だったけど、その公演の「美術的」な部分を担当することになった。クレジットには「環境」担当と記載されることになった。その公演を観るためにカンバセーションの前田さんがグラフに来てくれた。その日、公演中に映像装置のちょっとしたトラブルがあって、前田さんが現れたとき、僕や舞台監督の長谷川さん達が必死にトラブルを解決しよう躍起になっていたところだった。 「僕は、小さい頃から受け身なんです。アーティストっていうのは、能動的にいろんな事を自分の方から投げかけてくるじゃないですか。僕は、そうじゃなくて、それをどういうふうに受け止めるかっていうことに興味があるんです。」 僕たちは表現することを生業としているので、いつも、裏方仕事をテキパキとこなす人を見ると尊敬してしまう。僕ももちろん、展覧会の企画なんて事もやっているけど、展示するアーティストとのコラボレーションの様相がかなり強いせいで、企画をやっていてもやっぱり受け止めるというよりは投げかけている感じになってしまう。いいキャッチャーがいるとピッチャーもさぞかしやりやすいだろう。 「浮気性なんです、僕は。いろんなタイプがあると思うんですが、一つのことに没頭できる研究者みたいなものには向かない。いろんな事に目移りしちゃうんですよ。でも、その一見関係ないようないろんなことも僕の中では繋がってるんですよね。で、何が共通してるかというと、それはすごくシンプルで『グッと来る』とか『カッコイイ』とかなんですけどね。」 前田さんと話をしていると、「観る」ことの大切さに改めて気づかされる。結局、どんなに素晴らしい公演や展覧会でも、しっかりと観て受け止める事ができないと楽しみは半減してしまう。きっと、それって芸術に限らず僕たちの日常生活にも言えることなんだろう。こっちがしっかり見逃さずに受け止めることができないから、いろんなことがどんどん過ぎ去ってしまう。すでにそこにある美に目を凝らせ!そうすれば、もっとワクワクした日常がやってくる!と、自分に言い聞かせてみたり。 |
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guest:前田圭蔵 |
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