日々是ダンス。踊る心と体から無節操に→をのばした読み物 |
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和製ミュージカル映画のすすめ
Text: 森本万紀子
テレビをつければコマーシャルでも歌や踊りが多くて、ちょっとしたミュージカルブームの再燃かな、なんて感じたのはもうずいぶん前のこと。日本の映画や演劇の界隈でも、いわゆるミュージカルはもちろん、“ザ・ミュージカル”と気負うことなく歌や踊りがテーマとなったり、自然に挿入されることが珍しくなくなってきました。ミュージカルと言うと、即座にニューヨークのブロードウェイやロンドンのウェストエンドが連想されがちですが、日本が誇る宝塚歌劇団も忘れてはなりません。今でもチケットをとるのが難しいほど、マニア層からライト層にまで広く親しまれています。そのワン・アンド・オンリーの歌舞演劇の伝統が連綿と続いている、その宝塚市で、この秋、第9回目を迎える「宝塚映画祭」が開催されます。
ミュージカル映画はトーキー映画の夜明けに始まり、その後ハリウッドで一大文化を築きあげました。それから少し遅れること1939年、『鴛鴦歌合戦』という「日本で初めてのシネオペレッタ」が公開されます。マキノ正博監督がメガホンを取ったこの『鴛鴦歌合戦』は明るいロマコメ時代劇で、「僕は陽気な殿様〜♪」などと全編が歌に彩られ、いわゆる踊りのシーンを挿入せずとも、歌に合わせて歩く姿、傘がくるくる回る様子などはダンスそのものの傑作ミュージカル映画です。その後も『狸御殿』シリーズやエノケン、石原裕次郎から加山雄三、美空ひばりと江利チエミのコンビやフランキー堺、クレイジー・キャッツなどなど、優れたミュージカル俳優たちを輩出しながら和製ミュージカル映画は多数つくられ、大衆に広く愛されてきました。きっと陽気な歌や踊り(ズッコケ含む)を観ることで、浮き世を忘れて気分が明るくなったのしょうね。
こうした古き良き和製ミュージカル映画は、なかなか観られる機会がないものです。そこで「宝塚映画祭」ですよ。今年は『ゴー!ゴー!若大将』『サザエさんの婚約旅行』『てなもんや東海道』などでお楽しみいただけることでしょう。また、同じく宝塚市出身の漫画の神様、手塚治虫原作の宝塚歌劇団ミュージカルのスクリーン上映なんてレアな企画もあります。「ミュージカルって突然歌い出すのがなぁ〜」なんて言ってる人たちも、ぜひ一度ご覧になってみては。突然歌い出したくなるような気分を味わえること請け合いです。劇場を出たら、きっと浮き世を忘れて劇中の歌を口ずさんでいると思いますよ。
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