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日々是ダンス。踊る心と体から無節操に→をのばした読み物


2008年10月号 丹波マンガン記念館のこと他

ここでダンス
神戸ビエンナーレ 1年前イベント
2008年10月4日 13:00〜15:30

                                        Text: 神澤真理
                                        写真提供(一部):神戸ビエンナーレ2009事務局

 2009年10月、神戸の街で2回目のビエンナーレが開催される。その1年前プレイベントとして、神戸の中心部、三宮センター街でゲリラアートが行われ、5組のアーティストが参加した。
三宮センター街にはたくさんの店が並ぶ。休日になればショッピングなどに訪れた人々が通りにあふれ、紙袋を手に思い思いの話をしながら次の目的地に向かっていく。そんなパフォーマンスを観に来たわけではない人たちの間に、前触れもなくパフォーマーが現れ・・・その反応に興味を持った。

 今回のパフォーマンスは大きく3つに分類できた。
 1つ目は見た目で何かに扮しているもの。『乳男』と『CHOPSTICKERS』の2組は、おっぱいの格好をした2人と割りばしに扮した十数名、その場に現れるだけで目立つ。ただ歩くだけで周囲の人は振り返り、時には近づいてそのパフォーマンスに巻き込まれる。その人々の多くは笑顔で、日常の中には存在しないパフォーマーの隣を通り過ぎて行った。

 

 
 

 
 2つ目は、音と動きを観せるもの。『ユキンコアキラ』は手元で音源を操作しながら、音楽にあわせキャンバスに絵を描いていくリズムペイントを行う。アーケードに音楽が流れると、その前を歩いていた人が周りを取り囲み始め、それを見た人々も何が起きているのかと足を止める。中央で何が起きているかわからなくても、音楽とたくさんの人が何かを観ているというだけで、自分の目でも確かめたくなる。気づけば、道の半分以上を取り囲む状況になっていた。

 

 
 3つ目は、身体で表現するもの。『白井廣美』と『純喫茶 みち』は、人の身体で表現をする。白井は、突如大きな声で笑い出す。一歩、一歩と足を大きく上げながら近くの人の前まで近づき、相手と目を合わせてからまた身体をそらせながらおなかから笑い声を出す。そしてその相手と腕を組み、ゆっくりとリズムを取って廻る。ただそれをその場にいる人と繰り返していく。純喫茶 みちは、通りにテーブルといすを並べ踊り始める。お客さんを迎え、メニューを見せて注文を取る。喫茶店らしき雰囲気を作りながら、即興の物語が進む。たいていの人は、パフォーマーと気づかないまま近くを通り、その場では起きないはずという考えに反した表現者たちの行動に対し、一様に「なに?」という反応を示していた。
 

 
 

 
 それぞれのパフォーマーと観客の関係を見てみると、1つ目の乳男とCHOPSTICKERSに対して、周囲にいた人たちはパフォーマーを観察しているように感じた。第一印象でそれが何か作品ということがわからなくて対応できなくても、少し離れて観察してみて、興味が持てたら自分も巻き込まれようと近づいていったのだろう。
 2つ目のユキンコアキラは、パフォーマンスを観せる人が観せるための場所を作っていたので、たまたま足を止めた人がそこで観てもいいんだという気持ちになりやすかったのだと思う。また、誰かがやっている行動は、自分がやっても大丈夫という納得にもつなげられるので、とてもたくさんの人が参加していた。

 居合わせた人の反応は、3つ目の白井廣美と純喫茶 みちに対するものが一番反射的だったのではと思う。パフォーマンスとか作品を観るという意識のないところで起きた素の反応が観られたので、私としては一番面白かった。白井が大声で笑った瞬間に通りかかった女性は声を出すほど驚いたあと、怒っていた。単に驚かされたものと感じたのかもしれない。それは作品を観ようとしている人からは見られない反応で、私は「良い反応」と思わず笑ってしまった。不快な思いをした人がいた横で不謹慎な話だ。でも、それでこそゲリラアート、そんな気がした。
 作品として観せるのであれば、観せる人と観る人の境界がどこかにある。観る側としてどこにその境界をもってくるかで見え方が違う。時には作品に反応している自分も作品の一部として見られているかもしれない。それがきちんとした舞台を設けない時の表現にはある。もっと日常の中に表現の場所を持ってきてみたい。そう思う一日だった。



■〜港で出合う芸術祭〜 神戸ビエンナーレ2009■
 期 間:2009年10月3日(土)〜11月23日(祝・月)[52日間]
 主会場:神戸メリケンパークエリア
      三宮・元町商店街エリア
      HAT神戸エリア(兵庫県立美術館など)
 主 催:神戸ビエンナーレ組織委員会・神戸市
 共 催:兵庫県
  http://www.kobe-biennale.jp/

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