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かよんのオーサカトコトコハコめぐり
芝居や役者さんのこと、その他色々、見たり聞いたり、さまよったりしながらのお話。
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+ 源甲斐智栄子

「大阪人になろう」に参加して下さい。

*“大阪人になろう”の開催申込み要項はこちらをご覧下さい。

「はじめの一歩」

 古典芸能をテレビなどでご覧になったことがあっても、実際に生の舞台の体験のない方は意外と多いようです。
 自分の身近な人は自然と文化面の仕事をされている人が多いのですが、それでも、少し親しくなってお話を聞いてみると、実際に、歌舞伎や文楽、お能、舞、落語などの舞台を観たことがないという人が意外と多いのです。
 映画館には行っても、まず劇場に行くという方が少ない。そして、例えば、小劇団、ミュージュカルに足を運ぶ人でも古典芸能は全然という人や、古典芸能には行っても他の舞台は全然という方も多くいます。
 私は、その舞台がテレビ放送されたり、ビデオを販売されることがわかっていても、やはり観たい舞台には、たとえお金と時間が厳しくっても出来るだけ出かけていきます。それは、生の舞台というのは、それほどに魅力があると思うし、そこに行かなければ分からない楽しさがあると実感しているからです。

 古典芸能の舞台を観に行かれたことのない方というのは、はじめの一歩、まずそのきっかけがないみたいです。身近な人が誘ってくれるというのが1番きっかけになりやすいでしょうが、そんな人がいないと少々興味があっても1人で行くのは億劫ですよね。おまけに映画やメジャーなミュージュカルみたいに評判をなかなかキャッチすることもないから気持ちも突かされ動きにくい。そして、楽しいか楽しくないのか分からないものなのに、その大体の値段は映画よりうんと高いわけです。

 ただ今は、ネットや情報誌が色々あって、よーく見ていると、「行きた〜い!」と思うような催しが、ありがたい入場料で開催されていたりします。情報はキャッチしやすくなりました。そうした機会にちょっと足繁く通ってみたりすると、とびきりお気に入りのアーティストに出会えてしまったりするかもしれません。自分にも「マイアーティストファイル」というのがあります。一応期間限定ですが、とにかく今は見逃しくたくない。その人の舞台を観るためにはかなりの努力をしてしまいます。

 

「大阪人になろう」

 前置きが長くなってしまいました。
 「大阪人になろう」です。
 私は古典芸能に関わっていますから、そうした言い方でいえば、上方(京阪地方)ということになろうかと思いますが、今更ながら、私は大阪って本当に凄いと思っています。独自で生み、はぐくみ、発展させてきた文化があります。
 物語の、私たちが知ってる有名なカップルだって絶対大阪が1番多いですよね。お初徳兵衛、梅川忠兵衛、小春治兵衛、椀久松山、夫婦善哉の柳吉蝶子とか・・・。「大阪イコール吉本、たこ焼き、道頓堀ダイブ」っていうのは確かにそれはそれで有名ではあるけれど、少し残念な気がしませんか?
 じゃあ、私たちが大阪の文化について何か語ったり演じたり出来るかというと、それが残念ながら??なのですよね。
 たとえば上方歌といわれる「地歌」。季節や恋の悲哀を感じられたりと、暮らしに根付いたもの、芝居歌、おどけ物の作物など様々な歌があります。そんな歌が、昔、手まり歌をを知らないことは残念だと思います。
 と、偉そうに言ってはおりますが、私も殆ど知りません。常々、知りたいと思っていましたが、これは本を読んで単純に知れることではないのですよね。

「大阪人になろう」は、大阪の文化に少々突っ込んで触れてみたいという思いで、企画制作が進みました。
 古典芸能って、1部のコアな人を除いては、観に行ったという事実しか残らない人が結構多いような気がするのです。感想を自分の言葉で言える人って意外と少ないなあ〜と。評論の請負よりも、舞台の真似をちょこっとしてみたり、歌を歌ってみたり、あのシーンのあそこはこうだったけど・・・、と切り出す人って、とても舞台を吸収されている気がします。
 「大阪人になろう」をご覧頂いた方が、そんな感じを持って下されば素敵なのですが・・・。
 「大阪人になろう」は、映画と一緒位の金額で、ライブです。古典芸能が初めてという方にも優しい仕立てになっています。絶対いい機会だと思いますのでご参加下さい。

 

見所それぞれ

 VOL.1は、大阪の舞、山村流と地歌の魅力に触れます。
 1月24日(土)は、まずワークショップの開催です。上方舞のチームと地歌のチームに分かれてお稽古して頂きます。普通、古典芸能のワークショップでは、浴衣や着物の着用とかの規定があって、そこで多くの方が参加されなくなってしまうようです。
 もともと着物を着ている人は、古典芸能にも何かしら1歩近づいている人ではないでしょうか。1度も和服を着たことのない方って、思いのほか沢山いますよね?和服を着たことのない人でも、参加してもらいたい、参加して頂ける催しです。これがきっかけで、和服を着て、舞や地歌を習ってみたいと思われる方が1人でもいらっしゃれば嬉しいです。
 上方歌舞伎塾を出て、今は歌舞伎俳優になっている方の中には、大阪市が開催していた歌舞伎の実習講座を受けたことがはじめの1歩だった人もいます。
 上方舞は、山村流のご宗家、山村若先生が自ら指導して下さいます。ご宗家は以前、ピープルの第1回で、歌舞伎俳優の上村吉弥さんと対談をして頂いたことがありますが、お人柄もそうですが、大らかな芸質というのはとても魅力だと思います。地歌の澤千左子先生は、溢れる才能で益々活躍が期待される方、次回の「古典芸能を習おう」で、お話を伺せて頂きたいと思っております。
 1月25日(日)は、ワークショップの参加者の発表のあと、山村流と地歌の魅力、また、ワークショップ課題曲「十日戎(とおかえびす)」の歌詞などについて、お二人からお話をして頂いた後、山村流のご宗家に、おめでたく「萬歳」を、澤千左子先生の歌で舞って頂きます。
 「十日戎」は、もちろん「えべっさん」のことを歌った歌。「萬歳」は、おめでたい言葉を次々と言い立てて、言葉のめでたさにあやかって福を呼ぶという昔の考えから生まれた芸能です。24日のワークショップに参加された方は勿論ですが、25日をご観覧下さった方にも、帰り道に「十日戎」や「萬歳」を口ずさんで頂けると素敵だと思います。

 VOL.2は、上方落語です。
 「芝居に出てくる落語、芝居で観てみたい落語」というテーマで、桂宗助さんに演目を決めて頂きました。はじめに、落語について解説を入れて下さるそうで、落語についてあまり知識のない私なども、今まで漠然としていたものが、分かりやすく説明して頂けるのは楽しみです。
 桂宗助さんは、私が製作で参加させて頂いた曾我廼家喜劇「山椒の会」の第二回にご出演下さいました。この12月は大阪松竹座での松竹新喜劇にもご出演されています。自他称、米朝事務所の演劇部(?)に所属されるだけあって、芝居味のある方です。
 落語には歌舞伎を題材としたものが沢山あります。歌舞伎にも落語から来ている名作が色々あります。この両方を知っているからこそ、面白い演目も多いです。自分でいうのも何ですが、なかなか熱心な歌舞伎ファンの私ですが、未だあまり落語のことは知りません。そしてそういう人を沢山知っています。きっと落語のファンの方でも、歌舞伎は余り知らないという方も多いのではないでしょうか。
 両方のファンに楽しんで頂き、「落語をもっと聞きたい」「歌舞伎をもっと観てみたい」と思って頂けるような会になればと思います。

 VOL.3は、上方舞・吉村流と地歌の魅力に触れます。
 舞は上方舞の期待の人、吉村古ゆうさんです。地歌は第1回に続いて澤千左子先生にお願いします。(先生と呼んでいたり、さんと呼んでいたり、その方によって統一されてなくって本当に申し訳ありません。他意はないのですが、何となく普段の使いやすい言い方をさせて頂いてすみません。お許しを。)
 曽根崎心中を澤先生が地歌にされたものを、古ゆうさんが舞われます。その後、トークで吉村流と地歌の魅力についてお話を伺います。聞き手は松竹株式会社の演出家の水口一夫先生で、突っ込んだ面白いお話を聞いて下さるのではないでしょうか。
 その後、渡り鳥をたとえに女性を歌った「桐の雨」、住吉詣での「いざや」、作物の「五段返し」で賑やかに終わるという、変化豊かに選曲がされています。

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