(b)remo: record, expression and medium-organization(NPO法人 記録と表現とメディアのための組織)
http://www.remo.or.jp/
フェスティバルゲートの四階に位置する。正式に発足したのは、2002年10月。極めて特異な組織である。以下、次の四項目毎に紹介してみたい。(1)問われ、試みられていること。(2)成立の経緯。(3)運営方式(組織としての)。(4)現時点での具体的な成果(活動実績)、および今後の見通し。今回は、(1)について、簡略に述べてみる。
(1) remoについて、趣意書に、こう書かれている。「現代生活に溶け込んでいるメディアには一方的に発信される市場開拓を目的としたものが目立ちます。こういったいわゆるマスメディアと呼ばれるものの動向は、本来の人間のコミュニケーションツールとしての『メディア』の機能を狭めているのではないでしょうか」と。これは現状認識である。そして、次のように述べられる。「この組織では、特に近年目まぐるしい発展が見られる映像や音を用いた「個人を発信源とする表現」に注目しています。これらは、具体的なメッセージや物語でないことが多く、既存の装置(テレビ、映画館)では取扱いにくいものであるためにビジネスとしては成立し難い状況にあります。しかし、そのことは「個人を発信源とする表現」に価値がないということを示しているわけではないと考えます」と。「個人を発信源とする表現」の価値あるいは社会的意義が、remoで問題とされ、研究、実験等の対象とされるのである。
マスメディアの代表として、ラジオやテレビをあげることができる。複数の視聴者に、音声あるいは画像でもって、情報が一方向的に届けられる。
情報は、遠く離れた国での事件、流行のファッション、スポーツ中継、テレビタレントの色恋沙汰など、様々である。
一方向性以外にも、これら情報のメディアの特性として、距離の克服をあげることができる。すなわちそれらは、視聴者が現に居る場所から離れた所で収録され、それらの間の物理的な距離を乗り越え、届けられる。遠く離れた国も、近所の繁華街も、画面上に映し出される限りにおいて、実際のところ間に介する物理的距離は意識されず、視聴者にとって等距離である。
ところで、このように、発信現場と受信の場所との間の距離を乗り越えることを可能にする媒体は、ラジオやテレビに限定されない。
たとえば、電話がある。あるいは、ここ最近で急速に普及しているインターネットがある。これらはテレビ等、一方向的なメディアと異なり、受信者と発信者間のやりとりの双方向性を可能にする。距離を乗り越える。その限りではマスメディアと同じである。けれど、電話やインターネットは、やりとりの双方向性を可能にし、かつ、複数個人の間において、マスメディアとは異なる情報伝達方式を成立させる。すなわち、マスメディアの場合、発信者は少数であり、受信者は多数である。その間の一方向性とあいまって、情報伝達の形式が、支配者と被支配者との間の関係と、同一のものとなりかねない。これらと違い、殊にインターネットの場合、個々人の間に多様で錯綜したやりとりを可能にする。
remoでは、情報伝達のためのメディアが、研究や実験の対象とされる。けれども、マスメディアとは異なって、個人間をつなぐメディアが対象である。個々人の間の、多様で錯綜した関係において、音声あるいは映像として発される情報を、「表現」として把握し、その価値を考察することが目論まれている。
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