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6月17日(月)
 ぽかんと空いた日。猫道日記の整理。掃除。こういう日は、嫌なことを思い出す。

6月18日(火)
 続いてぽかん。フリーでやっていると、この“ぽかん”が楽しめない。次の仕事は来るのか? このまま年をくってしまうのか。。

6月19日(水)
 午後から、文楽チョキチョキ・ガールズの雨森さんと「文楽鑑賞教室」へ。すでに満席だったらしいが、補助席を作っていただいた。本公演でも、満席なんてあんまりないのに…と思っていたら、な、なんと会場は女子高校生でいっぱい!!! 学校の授業で来ているらしい。当然、うるさい。喋る。えらいとこに来てしもうた、と思うと同時に、知識も経験もない女子高校生の、文楽初体験の反応も気になるなあ。

 開場のアナウンス。まだうるさい。が、床が回り、大夫さんが登場すると「おー!!」と歓声が。素直だ。正面にビデオ映像が映り、大夫の仕草がアップで見えるようになっている。文楽の説明が始まる。淡々とした語り口。腹帯、落とし、椅子…と具体的なアイテムを説明する。聞いている子もいれば、退屈し始めている子も。そこに笑い声の実演。「わーっっっっはははは」と大げさというより、デフォルメされた“笑いの声”が響いたとたん、さっと場内が集中する。音量ではなく、マイクを通していない地声の響き、質感に反応している。自然に拍手がわき起こった。

 三味線も同じく。実演に入れば、パッと集中する。技術があるっていい。やっぱり技術は人を魅了するもんだ。

 最後の人形遣いの説明は、話し方も仕草も笑いも交えてとっても上手。慣れている。そして、高校生達も(私も)物体を見ることには慣れている。仕掛けがこうなっていて、両手をあわせるのが難しい、というのは、目で見て理性で納得しやすい。でも、大夫の声や三味線の音は、すごいと感じてもなかなか言葉では言い難い。うーん、でも、いい表現の言葉がまだ開拓されていないのかもしれない。

 さて、鑑賞教室の後半は、かっちりとした舞台を見せる。演目は「曽根崎心中」。床下に忍び込んだ男が女の足を喉元にあてて心中の決意を表す、というフェティシズム的傑作。何度か見ているが、今回の発見は、「暗闇」。心中を決意した2人が、闇の中ではいずって、愛しい人を手探りする。すごい。コレの歌舞伎は見たことないけれど、人間が地をはいずるのを想像するとあんまり美しくなさそうだ(歌舞伎ファンに怒られそうだ)。だけど、人形は、床の上を滑るように、滑空しているようにはい回る。美しい。そりゃそうだ、観客席から見えている地は、空洞なのだから。

 そして、道行き。高校生達は前の場面で終わったと思っていた子も多かったよう。そのぐらい緊張感があり、濃い場面に続いてさらに濃い場面が続く。三味線も大夫もにぎやかだし、なんで死に向かう人間をここまで盛り上げるんだ? やっぱり「文楽はバロック」(by ミルキィ・イソベ)だから? 

 やっぱりココでも男はかっこ悪い。「はよ殺して」という女を刺せない。近松サンは、本当にダメな男を書かせたら天下一品だわん。

 帰りに斎藤孝著『声に出して読みたい日本語』を買う。「曾根崎心中」の道行きが載っていた。

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