Part2
デザインから楽器へ
芸大時代の仕事は、美しい作品と簡潔な説明付きプレゼンテーションで、他の人のそれとは質が違っていて、すごい記憶に残っていますが。
建築やデザインの本や雑誌をよく見てたんだけど、美術なんかの本と比べると明解なものが多くてね。僕にはどうもこういう提案の仕方の方が性に合ってたみたいで、「用途に対する切れ味のある提案」のようなことを追っかけて作品作ってデザインコンペなどに出したりしてましてね。でも大学院に入る前に就職するかどうかって時、ちょうど現役で働くデザイナー(芸大の卒業生)に会う機会があって、その時に「おまえ就職したらあかんで。歯車になるだけやで」とか「就職するくらいやったら自分の作品作っとけ。俺、今ほんまにそう思ってるからノ」って言われてね。考えましたよ。でもそう言われても実感もわかないので、決めかねていたんだけど、逆に一度、社会性とか用途とかをすっとばして、趣味性の強いものを作ってスッとしようと思ってオリジナル楽器を作りはじめたんです。
|
流紋琴 |
木材(ケヤキ、シタン、アガチズ)真鍮、漆、カシュ−
'89 京都デザイン大賞コンペ準大賞 |
|
|
五弦琴 |
木材(シオジ、ナラ、ブビンカ)真鍮、漆、カシュ−、ニス、あわび貝
'89 京都デザイン大賞コンペ準大賞 |
|
|
流紋琴 |
木材(ケヤキ、トチ、ブビンガ)真鍮、漆、カシュ−、ニス、あわび貝
'89 京都デザイン大賞コンペ準大賞 |
|
|
12弦ギター |
木材(シオジ、ナラ、コクタニ、ブビンカ、スプルース)真鍮、樹脂、漆、塗料 |
|
|
ソーラー振り子ピアノ |
木材(シオジ、トチ、チーク、スプルース、シタン)太陽電池、モーター、真鍮、銅
鉄線、重り、テグス、ゴム管、チェーン他 |
|
|
カンコロ |
杉板、スチール空缶、ピアノ線、オイルステン |
|
さんざん楽器を創った後、また転換期がおとずれるんですね。
音というものを素材とする時に、楽器を作ることではかえって見えにくいことがあるんです。モノ自体の装飾とかデザインがどうしても先に見えてしまうからね。それで、オリジナルな楽器を作り続けるのも限界があるなって思いはじめたんですね。バリエーションだけで作っているような行き詰まりも感じていたし、楽器なのに演奏者不在で展示のみっていうのもなんか宙ぶらりんだったし。
音は誰かが鳴らさないと聞けないですしね。
そうなんですよね。へりくつこねて「イメージとしての音」みたいなことは言えたかもしれないけど、そういうのって説得力弱いでしょ。
|