今回は溜まりに溜まったこの夏の思い出を吐き出します。写真も何もありません。視覚的につまんないかも知れません。許されて下さい。では・・・
2002年8月
中座が閉館されるまでの3年間、片岡秀太郎さんが主宰される中之芝居がありました。秀太郎さん愛之助さん親子はもちろん、今は亡き嵐徳三郎さん、坂東竹三郎さん、上村吉弥さんら、上方の歌舞伎役者さんらが丁々発止と上方味たっぷりに舞台を観せてくれ、とても楽しませて頂きました。
中之芝居がなくなり、それからは関西での8月といえばもとの上方歌舞伎会だけ。東京に行かない限りは、関西の歌舞伎ファンは2日間のその会を楽しみにするだけになっていました。
それが、今年の8月はもう、あるわあるわの大騒ぎ。
第1週は京都春秋座「亀治郎の会」、シアタードラマシティ「平成若衆歌舞伎」、第2週は岸和田浪切ホール「浪花歌舞伎」、第3週はワッハ上方「みよし会」、第4週は国立文楽劇場「上方歌舞伎会」という具合です。
第2回目の「みよし会」、恒例となった勉強会の「上方歌舞伎会」以外の3公演以外は今回が旗揚げという・・・とにかくコアな関西の歌舞伎ファンにとって見逃したくはない公演が目白押し、各地からも随分ファンが来られました。
ですので、この8月の毎週末は歌舞伎観劇で過ごし、「財布も身体もへとへとやわ〜」というお声もけっこう聞きましたっけ・・・。もちろん、私もそのうちの一人。私が親しくさせてもらっている名古屋の女史は毎週末の関西通い、全部を網羅した上に、その上、東京まで行ったという・・・私も行っちゃいましたけどね(笑)。
また、好きな役者が大きな役をする、せめて3回くらいは観ておきたい、それが一ヶ月公演なら初日、中日、千穐楽とかという8日間隔ぐらいで観られますが、ある方は「浪切の浪花歌舞伎に初日、中日、千穐楽と行ってん」「えっ、それって3回公演の全部を観たってこと?」「うん、そう」・・・凄いです。かく言う私も2回観ましたハイ。
舞台は一回一回違うし、やっぱり歌舞伎が好きだから、お金と時間と体力が許すなら何度も観たい。意外と体力いるんですよね・・・。生身の役者が目の前で演じ、それをヒシッと受け止める息苦しさ、暑苦しさ?といいますか、とにかく力が入るのです。それが心地よい疲労感の場合もあれば、残念ながらそうじゃない時もある・・・。
私は「関西・歌舞伎を愛する会」という団体に所属していますので、歌舞伎のチケットをタダで貰え、仕事として観られるのだろうと思われる方が時々いらっしゃいますが、そんなことは絶対に絶対にぜーったいにありません。思わず力を入れて言っておりますが、そんなことはないのです。
私の立場は観客、たとえ1枚のチケットでも買うことが歌舞伎興隆のためにもなるし(オーバーですが)、自分自身が自由な気持ちの観客でいるためにも、チケットを買うという行為は必要なことだと思っています。
若衆歌舞伎「新・八犬伝」と
亀治郎の会「摂州合邦辻」「春興鏡獅子」
熱くて長い8月のゴングを鳴らしたのは、まず、3日夜の部の「新・八犬伝」でした。
場内は後ろ僅かを残すだけのなかなかの入り、ロビーには沢山のお花、豪華なプログラム、開演前には見知った顔に大勢会い「うひゃー」「久しぶり」などと、どんどんテンションが上がって来ました。
そうしていよいよ開演となったのですが、序幕で物語の起こりが説明されている科白が、聞き取れなかったり理解できなかったりした私は、残念ながら最後まで、話の筋が余り理解出来ず、この物語が何を伝えたかったのかも分からないために、芝居に入り込むことが出来ませんでした。ストーリーの大体は知っていたはずなのに・・・。
そして、今まで若い芸ではあるけど、それなりのものを観客に伝えてくれた若手も、今回は、舞台面の勝手が違ったせいか、裾のさばきや身体のこなしに手こずっていたり、何とか大役をこなそうという様子が目につくばかりで、観客を一緒にはじけさすような熱さを放っているとは思えませんでした。
私が若手に期待しているのは、とりあえず、気迫や、日々の修行が身について進歩したねってことで、今回はそれが感じられなかった・・・でも、こうして、若手に目が向けられ、そうしてせっかく頂けた機会なのですから、これを経験に前に進んで欲しいと思います。
一方、亀治郎さんの玉手御前。
これは気迫の玉手でした。ハンバーグを作るのに牛育てから始めましたっていう感じ。台本を咀嚼して咀嚼して、今の自分はこれだけのものを出した、さあ、どうだいって感じで、とにかく真摯に取り組んできたものが迫力があるのに丁寧にだされている。不思議だったのは「鏡獅子」を観ている最中から涙が出て来て困ったこと・・・もちろん、今まで「鏡獅子」で泣けたことなんてありません。亀治郎さんの初めての自主公演という特別な思いや、何ともいえない空気が、単純な私を感傷的にさせたのでしょうか。
千穐楽、普通のカーテンコールじゃつまらないっていう亀治郎さんの考えから、出演者と観客全員の記念写真に場内は大うけで、泣いたり笑ったり・・・本当に楽しみました。
春秋座ってけっこう近いですよ。京阪電車で出町柳に出てタクシーが何といっても便利です。料金は800円位。横の駐車場の所から上がっていけばエレベーターもあるので、足の痛い人も噂に聞く心臓破り?の階段を登らずに行けますし、少し高台にある劇場の横にあるバルコニーからは京都の町並みを見渡すことが出来て小さな旅気分でした。
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