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浪切ホール「今様晒三番叟」「夏祭浪花鑑」
みよし会「後の梅川」「浪花の四季」

そうして、翌週は浪切ホール。
ここもちょっと旅気分。劇場へ続く商店街は岸和田のだんじり祭の囃子が聞こえ、劇場の裏には海があります。今回は暑さにクラクラして覗きませんでしたが、春の柿落としに来た時はわざわざ海の方まで歩いて行き、何だかとても嬉しかった・・・。限定“岸和田だんじり囃子の目覚まし時計”なんかも売っていて、ここに劇場が出来たからこそ、今まで余り知らなかったこの町を歩いている・・・楽しいです。

今回、私は「今様晒三番叟」っていう舞踊を初めて観ました。孝太郎さんは晒しの捌きが丁寧で美しく、舞踊をきっちりされているのでしょうね。また、「夏祭り」のお梶も子供の扱いが細やかで何気ない仕草に自然な情がありました。私生活でも小さなお子さんがいらっしゃることがこんな風に舞台にも反映されているのかしらんと、近所のおばちゃんのように観てしまったりして・・・。
翫雀さんも数年前に観た団七より上方味がでて芯がとおった感じ、愛之助さんの徳兵衛も、役柄からいえば、もう少し“とのこ”を入れたお化粧の方がいいのではとも思いましたが、下層階級の侠客のやんちゃな雰囲気がとても自然でよい感じでした。

その次はみよし会。
これは制作協力として名を連ねていますので、観客として楽しめず、一度も舞台を通して観ることは出来ませんでした。ですので、前の3つの感想とは違って、純粋に観客という立場ではお伝えすることは出来ないと思いますがご容赦下さい。
それにしても自主公演は大変です。普段は劇場のプロがする仕事、宣伝、営業、業務、場内を、素人がするのですから・・・。観客として良いお芝居をみたい、その延長線上として制作に参加することになった人間としては、少し複雑な気分でもあります。また、当初心配していた券の売れ行きも後半にグッと伸びた為、開催の準備にかかりたい時期になっても、昼間はチケットの対応に追われ、なかなか思うように進まないという嬉しい悩みもありました。
ワッハ上方のスタッフの人達はとても親切でその場の状況にあわせ出来得る限りで対応して下さいましたし、ボランティアの方々、また、劇団G:フォレスタや南船北馬一団の方々、また、今回も第一回同様、知り合いやら関係者やら、とても多くの方に助けて頂いて、つくづく幸せなことだと思います。

関係者の私がいうのも恐縮ですが、この公演、かなり評判良かったです。
私の周りにはけっこう辛辣な意見を言う方がいます。グサッグサッと言い当てられることでショックも受けますが、耳にうるさいことを言ってくれる人と離れることこそ怖い(ってマゾっ気があったりして?)・・・その人たちは無責任に言い放つだけでなく、理解しようとして話し合える人たちで、何より正直に向き合ってくれていることに感謝しています。これからも大切にお付き合いをさせてもらいたいです。

まず、その人たちに台本の脚色、演目選定の面白さなどが評価されました。これは水口一夫先生あってのことです。主宰の吉弥さんはもちろんだけど、水口先生がいなくては公演は出来ませんでした。
演目が決まってすぐ、35年前の台本を取り寄せ読んでみました。大正期に作られた作品らしい、性格劇的要素が強く印象に残ったのですが、新口村のシーンが序幕に入れられたり、忠兵衛の父・孫右衛門のエピソードなどが追加され、情感豊かな作品として現代に生まれ変わったという気がしました。

その次に良かったのが、出演の役者さんたちが、持てる力をとてもよく発揮していたということ。
吉弥さんはとても美しく、舞台が大きくなられた気がしますし、竹三郎さんは流石、上方の風情満載です。そして凄かったのが亀治郎さん。筍の皮がベリベリッと音をたててむけているようなそんな成長ぶり。この方、上方の女形、こってりとイケますね。「いやぁ、亀治郎さんて、素晴らしいねえ」と何人かの人が私に言っていかれました。
抜擢の松次郎さんも、大先輩を相手に、ぐいぐいと引っ張られるように良かったですし、竹志郎さんはもともと千葉県の方ですが、竹三郎さんのご指導と努力のかいあって、言葉といい、物腰といい、上方の雰囲気がでてました。扇乃丞さんは舞踊も素敵、とにかくこの方、以前「後姿が素敵!」とあんまり私が連発したもので、思わず「あのー、前は?」と聞かれちゃったことがあるのですが、今回もきっちり観せて下さいましたよ。
とにかく、全員について書きたいくらい・・・かなり贔屓目もあるのでしょうが、皆さんはいかがでしたでしょうか?

「上方歌舞伎会」と「稚魚の会 歌舞伎会 合同公演」
その次の週は東京まで日帰りで、あちらの、普段は脇から舞台を支えている人たちの勉強会、「稚魚の会 歌舞伎会 合同公演」に行って来ました。その翌日は「上方歌舞伎会」です。
東京の方の特に「加賀鳶」は、橘三郎さん歌女之丞さんが素晴らしく、なるほどベテランという芝居でした。日頃の修行の成果を確かに発表されたと思います。関西贔屓の私が観ても、言いにくいことですが、東京の勉強会の方が全体レベルが高いと思いました。
「上方歌舞伎会」の何が不満だったのかといえば、関西弁と義太夫訛りは違うのに普通の関西弁で科白を言っている人が多かった。そして、仕草の1つ1つを何故この役がしているのかを、理解せずにだんどり通りにだけしてる?みたいな役者さんが目についてしまったからです。

役者さんにとって誉め言葉というのは、確かに大きな力になることだろうと思いますが、耳に痛いことを言ってくれる人、そういう観客や先輩の誠意を汲み取って、これからも精進して頂きたい・・・誰だって嫌なことはいいにくい、でも可能性があると思うから言うのです。言われるうちが華(物凄くありきたりでお恥しい)な訳で、特に歌舞伎の芸というのは積み重ねで、だからこそ、身についた芸を持ってらっしゃる役者さんを、観客でありながら尊敬し敬意を表すのです。
義太夫も舞踊も役の性根も、何かを得るためには、しんどくっても、それと向き合うしかありません。・・・とか何とか偉そうに(笑)。

私も耳に痛いことを言って下さる方を大切に・・・もっとしんどいことに向き合えるような人になりたい・・・です。

源甲斐智栄子
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