| 受賞 
                                          
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                                  | 「封印切」おえん 
                                        |   —上方歌舞伎会と言えば、一昨年の「車引」の桜丸、素晴らしかったですねえー。 
                                
 あれで、初めて十三夜会賞という賞を頂いたんですよ。嬉しかったですね。
 
 
 —これから、どんどんそういう対象になっていかれる方だと思います。
 
 ありがとうございます。去年は13年度を通してということで俳優協会賞を頂きました。それがね、それにはどういうことが評価されたかが書いてあったんですが、「河庄」の幕開きの芸妓の小糸、出てきてすぐ引っ込んじゃう役ですけどね。それと、これも幕開きの「封印切」の仲居。それと近松座「天網島」のお杉。その三つの役が上方の雰囲気が出てきたということで頂いたんです。
 一昨年は勉強会とかで色んな大きな役をさせて頂いて、「封印切」の忠兵衛とか、桜丸とか、そうしたものが入っているのかなと思ったんですが、賞の理由を見た時に、普段の役で賞を貰ったっていう、上方の雰囲気が出てきたって評価して頂けたというのは、長い目で見て良かったかなと思って、桜丸の時とはまた違う喜びがありました。
 
 
 —私があらためて扇乃丞さんをいいなと思ったのは、徳三郎さんの代役で「封印切」のおえんをされた時ですね。
 それまで、勉強会とかでは抜群に巧いし、脇でもいいし、そう思って拝見していましたが、急な代役で、鴈治郎さんをはじめとする凄い顔ぶれの中で立派に勤められましたでしょ。
 
 あれは、初日が終わった後、「明日から」って、急に言われたんですよ。その夜は台本とにらめっこして大変でした。あの初日が徳三郎さんの最後の舞台だったんですね。
 2日目はNHKの録画取りだったんですが、前の日(初日)にテストでまわしてたそうで、放送はそれが流れました。
 でも、「こんなこともあるんだなー」って・・・。あらためて、普段から他のお役もよく見て勉強しておかないといけないなあって思いました。
 
 —忠兵衛を見送るおえん、成駒屋さんのあの幕切れの形は大好きなんですが、本当に良かったですねえ。
 私、財布の都合で南座のてっぺん(3階)で観ていて、そこまでビンビン伝わって来ましたもの。
 
 あの時は関係者の方もわざわざ楽屋まで訪ねて来て下さったりして、励まして下さって嬉しかったです。
 師匠も初めは「気楽にやんなさい」とおっしゃって下さいました。そして、何とか舞台が無事に済んで、2,3日してから段々と駄目だしをその日の出来具合に応じて言って下さいました。本当にありがたくて心強かったですね。
 
 
 —そして徳三郎さんが亡くなって・・・。そのお通夜の帰り道、お会いしましたよね。
 
 そうそう、顔見世が終わって、僕たちが向かう途中で、帰り道だったんですよね。
 
 
 —私も顔見世を見た日で、終わってから伺ったからとても遅い時間だったんですけれど、徳三郎さんのお通夜の帰り道に、上村吉弥さんとご一緒の扇乃丞さんにお会いして・・・なんだかあの冬の夜のことがとても印象深いんですよ。
 
 近松座の公演が終わって大阪に帰ってきてすぐに徳三郎さんのお見舞いに伺いましたが、その時は体調が宜しかったようで外に出てらして、持っていったイチゴにメモを添えてその時は帰ってきたんですよね。
 結局、近松座でお会いしたのが最後でした。
 
 
 —自分が関わった仕事で恐縮ですが、大阪市のシティホールフェスティバルの上方舞の「渡辺の綱やん」、あれも凄く評判良かったですよ。
 
 「渡辺の綱やん」(笑)。あれは面白い踊りですねー。暑かったですが・・・(笑)。
 
 
 —すみませーん。
 で(笑)、歌舞伎舞踊の中でああした柔らかさがあるものってないような・・・。
 
 そうですね。芸妓さんの黒の衣裳で、男の踊りを踊るっていうのは面白いですよね。
 
 
 —女の人になった男の人が、女として男の踊りを踊るんですものね。
 上方らしくて味がありますよね。歌舞伎舞踊での芸妓さんは、江戸風の粋なものが多いですものね。
 
 あと、みよし会でさせて頂いた「昔話」っていうのも面白かったですね。
 
 
 —あれは皆さん驚いてらっしゃいました。
 
 カニさん(笑)。
 
 
 —ええ、カニさん(笑)。
 
 勉強になりましたね。
 
 
 歌舞伎フォーラム公演「日高川」
 「公演案内」
 http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Studio/5735/k_jun_03.3.html
 「プレ・イベント茶話会」
 http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Studio/5735/k_jun_03.333.html
 
 —3月、歌舞伎フォーラム公演では「日高川」を踊られますが、これも小芝居復活というか、その手法なんですか?
 
 そうですね。今、竹本の三味線をなさってる豊澤時若(兼本末次)さんという方が、昔、関西で小芝居をされていまして、その最後の方達のお一人なのですよ。
 その時若さんがご存知の小芝居の形を復活させてやろうという企画なんですよ。
 
 
 —じゃあ、振付は時若さん?小芝居では役者でいらっしゃった方ですが・・・。
 
 先月(12月)も何回かその振りをつけて頂いたんですけどね。
 
 
 —時若さんはお元気に踊られてましたか?
 
 ええ、ちょっと足が痛そうでしたが・・・。
 30年ぶりに踊ったとおっしゃってました(笑)。
 
 
 —きっと素晴らしい舞踊になると思います。
 扇乃丞さんって絶対に踊りの師範さんのような腕でしょ?
 
 一応、花柳の師範は持ってますが(笑)・・・。
 
 
 —あら、ごめんなさい(笑)。でも、やっぱり(笑)。
 普通に巧い、っていうのじゃないですもの。引き込まれますもの。
 
 いや、でもね、人形振りって初めてなんですよ。
 
 
 —宙吊りはされるんですか?
 
 あ、あれはね、なくなったんですよ。会場の都合とかもあってね。新しいチラシには載ってないですよね。最後に飛び込んで、舞台全体が波になるじゃないですか。その時にブランコみたいなのが降りてきて、それに乗って上がって、着けていた蛇腹を垂らすんですけどね。
 
 —あっちこっちに飛んでいくみたいな形ではなかったんですね(笑)。
 
 そうです。
 でも、人形振りと言ってもね、普段の動きとは随分違いますからね。まあ、それがご覧になって、とても面白いところだと思います。これからお稽古して作っていくつもりです。
 
 
 —もう振りは大体入られましたか?
 
 ええ、だんどりは大体。なかなか難しいですね。
 
 
 —黒子の方に跳び乗ったりもあるんですか?
 
 ええ。あります。
 
 
 —黒子はどなた?
 
 澤村国矢さんがして下さるんですけどね。
 
 
 —では、扇乃丞さんのこれからのご予定は?
 
 今日ですか?
 
 
 —いえいえ、夜何時に子供さんをお風呂にいれてあげてとかそんなのではなくて(笑)、今年のスケジュールです。
 
 あっ、そうですね(笑)。
 2月は演舞場で師匠の「曽根崎心中」お初50年ということで、3月は歌舞伎フォーラム公演の「日高川」、4月が歌舞伎座、5月が近松座で「関八州繋馬」です。
 近松座のこれ、結成の時のチラシ(チラシをだして)なんですけどね。その時の予定にこれ「関八州繋馬」が入ってましてね。
 20年以上、21世紀に入っても続けてるんですから、本当に凄いですよ。
 
 
 —「関八州繋馬」は見たことがないので・・・これも楽しみですねえ。
 扇乃丞さんの舞踊は本当に素敵ですから、「日高川」も早く見たいです。
 
 ありがとうございます。
 
 
                                
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                                  | 「本朝廿十種香」八重姫 
                                     |  
 大阪に住む上方歌舞伎役者
 —扇乃丞さんは、ご結婚されて大阪に住まわれるようになられましたでしょ。
 以前、インタビューさせて頂いたのは、ご結婚後すぐだったと思うのですが、あれが平成11年で、あれから可愛い一男一女に恵まれて・・・。
 今、どうですか?東京の方が大阪にお住まいなられて。
 
 僕はもともとね、芝居で来ていましたし、大阪は「僕にはあってるなあー」と思っていましたし、便利だし、食べ物も美味しいしね。僕は好きなんですよ。
 一番良かったのは言葉がね、関西の人の話す言葉が絶えず周りにありますからね。買い物に行っても、電車に乗っても、もちろん家族も喋ってるし、そういうのが自然に身体に身についてくれば、上方の芝居にももちろん良いでしょうし・・・。
 
 
 —そうですね。「封印切」のおえんなんかは、関西と何か関わりのない方では難しすぎるような気がしますもの。
 
 捨て科白が多いですからね。
 
 
 —ぶちぶちっと。
 
 ええ、ぶちぶちっと(笑)。
 
 
 —奥様も、奥様のお母様もとても綺麗な関西弁ですものねえ。
 
 そうですね。上の子が3月に3つになるんですよ。この3カ月位で喋りだしたんですけれど、これがこてこての関西弁でね。上手いなと。そのうち直されたりしてね(笑)。
  —お父さん違うよって(笑)。
 私は大阪生まれで大阪育ちですが、芝居が好きですから、正直、東京に住みたいなと思ったことがあります。休みの日に一杯芝居が見れますでしょ。色んな芝居がかかっているし、歌舞伎も毎月あるし・・・。
 
 そうですね。そういう点ではね。でも、関西は好きですよ。歌舞伎も一杯かかって欲しいですね。
 僕もまだまだ、3年や4年関西に住んだからって上方の芝居の言葉や雰囲気が身につく訳ではないですけれど、ですから、上方らしい風情がでていたと評価して頂いた賞は、これからの励みになりました。
 僕はね、弟子入りして今年でちょうど20年なのですよ。節目の年ですし、そうしたことも意識して、頂いたお役を大切に勤めて行きたいですね。
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