Under
experiment(実験中)
“ログズギャラリー”の意味を教えてください。
浜地 辞書には、「犯罪者目録」「取調室」の2つの訳が載っていて、僕たちは「取調室」の方に反応したんです。頭の中に、目撃者がマジックミラーごしに容疑者を見ているイメージ。それが面白いと思った。
“見る/見られる”の関係を意識して?
浜地 そうです。これは、[ガソリンミュージック&クルージング]のアイデアがほぼ固まってきてから探した名称なんです。まず、僕たち2人が運転席と助手席に座っている。そしてお客さんが2人後部座席に座る。その関係が面白いと思った。美術館や画廊、劇場や映画館では、アーティストが見せる側で、不特定多数の観客が見る側でしょう。でも、車という密室の中で、アーティストが2人、観客が2人ならどうなるんだろう。“見る/見られる”が入れ替わったりするかもしれない。そんなイメージがまず最初にあって、“ログズギャラリー”という言葉を探しだしたんです。
2人はどこで知り合ったんですか?
中瀬 18才の頃、大阪芸術大学で。音楽の雑談する仲間のうちのひとりだったんです。一般に流行っている音楽より、ちょっと変わった音楽がいいよな、美術でもこんな変なアーティストがいるぞ、というような情報交換をしていたんです。
どんな音楽を聴いていたのですか?
中瀬 みんなバラバラ。僕はへヴィ・メタル系。髪も長かったし。
ヘビメタのどんなところが好きでした?
中瀬 うーん、当時と今の感覚は違うけれど……音量やスピード感、エレキギターを速く弾くと気持ちよく聞こえることに反応していたんだろうな。僕には、曲に合わせて踊るという回路はないので、膨大な音量の中でガンガンと首をふっている方が気持ちよかった。
壊れた人形のように?
中瀬 そうそう!
当時、聴いていたミュージシャン名は?
中瀬 メガデス、ブラックサバスをはじめ、ハードコアを聞いていました。
浜地さんが当時、よく聴いていた音楽は?
浜地 暗いパンク、暗いロック、暗いポップス、中・高とすねた人間だったので(笑)。中学生の頃は、どれがエレキギターの音か分からなかったんです。ギターは、ポロロンかテケテケという音だと思いこんでいたので。でも、偶然、深夜ラジオで聞いたクランプスというバンドが、“ZAAAAAA”という音を出していたのにすごく驚いたんです。これもエレキギターの音だと初めて気づいた。
中瀬 僕らの他、ロックンロールやノイズが好きな友達もいて、ジャンルは違っても何かしら通じ合うところがあって、えんえんと話をしていたんです。
→おまけ
自分達で演奏をすることは?
中瀬 僕は、友達とスピードメタルバンドをしていました。
浜地 僕は、性格的にステージの上に立つのは出来ないと思っていたので。でも、例の“ZAAAAAA”という音は、エフェクターという機械を通すとそうなるらしい、というのを知ってエフェクターを買ったんです。ギターは持っていないのに。鉄道模型が趣味の人が電車を買わずにレールだけ買うようなもの。いや、逆かな。
中瀬 僕は僕で、エフェクターを使うとギター音が“JYOOO”や“GYOOOO”になるのが面白くて、自分のバンドでやってました。ベースだったのに、ベースらしい音はさっぱり出さないで“JYOOO”や“GYOOOO”ばっかり。
楽器より、音を加工していくことの面白さを発見したんですね。
中瀬 そう。浜地の借りていたマンションの一階が音楽スタジオになっていて、ワリと安く借りれたんです。そこで、雑談仲間達とエフェクターをずらっと並べて、ギターだけでなく、レコードプレーヤーやリズムボックスなどを音源にいろんな音の実験をしていた。ものすごい大音量を出したり、叫んだり。
ライブや舞台に立つという目的があっての練習ではなく、遊び場のようなものでしょうか?
浜地 遊びであり、実験場だった。そこで“何か”を見つけたいという思いは持っていました。
中瀬 僕は3回生ぐらいの時に普通免許をとって実家の車であちこち出かけていたんです。その時に、ドライブしながら音楽をかけると楽しいことに気づいた。曲が変わると周りの風景がころっと変わるような気がするでしょう。暗い山道を怖い音楽をかけて走ると何か出てきそうでゾクゾクする。それがすごく不思議で。くだらない映画よりずっとドキドキできる。まあ、くだらない映画も好きなんですが。
確かに。「デートの時は、この曲」といったマニュアル本も出ているぐらいですし。
中瀬 まあ、そんなこともありますね…。
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Title: Gasoline Music &
Cruising
Year: 1995
写真: 福永一夫 |
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