collaborator(合作者、協力者)
では、最新の『釜山ビエンナーレ2002』のお話をうかがいましょう。この展覧会では、美術館内にデモンストレーションとドライブの様子を流しているビデオとチラシを置いているだけで、車は見あたりませんが?
浜地 地下の駐車場にあるか、もしくは釜山市内を走っているはずです。
ビデオの中で運転し、エフェクターを操作しているのは誰でしょうか?
浜地 Kang Kyoung-Houng(カンくん)という『釜山ビエンナーレ2002』のスタッフのひとりです。今回の僕らの対象は、『釜山ビエンナーレ』という現代美術展を見に来た不特定多数の観客ではなく、カンくんという個人なんです。
中瀬 そこが大切なんです。
カンくんとは、どうやって出会ったのですか?
浜地 今回、僕たちは、具体的な対象と関わりたかったので、企画の段階から“コラボレーター”を求めていたんです。その人と僕たちが顔を見合わして作りあげていきたかった。準備中は、事務局との連絡がうまくいかなくて適当な人がいるのかどうか分からなかったのですが、いざ現地に入るといきなり彼を紹介されたんです。
中瀬 結果としては、最高のパートナーだった。車も運転も大好きだし。
カンさんと一緒にどんなことをしたのですか?
浜地 車のセッティングをし、彼の運転で一緒にドライブをし、エフェクターの操作の仕方を伝授しました。効果的なつまみはこれとこれだとか、僕たちが持っている作品のエッセンスをカンくんに渡したんです。すべては無理だけれど可能な限り、教えました。
中瀬 技術よりも、エンジンをふかした時の音を変えていくことが面白いってカンくんが感じてくれたらいい。彼は、センスがすごくいい。元の音をつぶさないように、エンジン音ならエンジンと分かるように変化させていく。僕たちが帰った後、カンくんが自分なりにアレンジしていったら、それも面白い。
ログズギャラリーにとって、より多くの人ではなく、一人と濃密なコミュニケーションをとって確実に伝えていくことが理想でしょうか?
中瀬 もちろん、結果としてカンくんが行うデモンストレーションで、より多くの人に広がっていくことがあっていいと思っています。
浜地 僕たちが帰った後、カンくんが窓口になって、友達や観客と一緒にドライブに行ったりしてくれるといいな、とは思いますが、それはカンくん次第。
今は、セッティングが終わった段階ですが、手ごたえは?
浜地 カンくんに出会えたことが何よりの収穫。今回、そういうスタイルにしたのは、やっぱり最初の、自分達の立ち位置に戻ったような気がします。
中瀬 何年も前に確認したことを、今、改めて確かめたようです。ログズギャラリーも8年目に入って、僕たち自身も状況も変化していった。それがまたぐるっと回って、本来の僕らに戻ったように思います。
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