win back〜(〜を取り戻す)
1998年にシトロエンを廃車にしたそうですが。
浜地 とても故障の多い車で、それ以上、維持することができなかったんです。
それからの活動は?
浜地 僕たちがシトロエンでドライブする以外のやり方をいろいろ模索していました。1998年には、中之島公会堂で開催された『テクノテラピー』で、古いエレベータを使った作品を発表したりしていました(→ELEVATOR)
。?当時は、ドライブとそれ以外の作品は分けたかったので、ログズギャラリーではなく、“浜地靖彦+中瀬由央”の名義でやっていました。
[ガソリンミュージック&クルージング]は続けていたのですが?
中瀬 いえ、僕らが選んだシトロエンという“車”がなくなったので、いったん[ガソリンミュージック&クルージング]は封印しました。
浜地 それからは、ほどんど[RESIDUAL NOISE]というタイトルでやっています。これは「残留雑音」と訳するのがいいのかな。本来はオーディオ用語なのですが、幅広く使えるのでこのシリーズを続けています。その頃から美術館やアート関係のイベントなどから出品依頼に対してどのように展開していくか、いろいろ試行錯誤をしながらやってきたんです。でも、いつの間にか僕たちの中で美術館の既成の方法やシステムにのっからないといけないような意識になっていた。だけど、最近、ふと「僕らが最初にやろうとしていたことは、こんなことじゃなかった」と気づいたんです。「車」という自分達の場所を持つこと、2人のアーティストと2人の観客という関係を面白がっていたはずなのに、美術館という場、不特定多数の人達ってどういうことなんだって。
中瀬 簡単に言うと、僕らは相手の顔がしっかり見えている状態が欲しい。
浜地 いくつかやってきたプロジェクトの中には、カッコイイ車があり、いい音も出ている。だけど、僕らにとっての具体的な対象となる“人”がいない。自分達が本来したかったことだけがごっそり抜けている。人がいなくて空っぽ。
より多くの人達に向けてメッセージを発していくのではなく、もっと自分自身が確かな手ごたえを感じたかったんですね。。
浜地 そうです。今は、最初の大切なところをもう一回確認した感じ。
中瀬 よく「ああ、ログズギャラリーって車の…」って言われるんですよ。確かに説明するのは難しいけれど、「ああ、○○の…」と外側のことばかりで語られると、こぼれるものが多すぎる。
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