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 私は寺の娘で、母の実家も寺だが、実は、母方の曽祖母は新橋の芸者だったそうだ。
 水戸藩士の学者と恋をして生まれた男の子が高野山へ修行に預けられた。
 それが祖父だった。
 母曰く、わが父ながらたいへん美しい人で、<門跡さん>というあだ名だったそうだ。
 そういう血が私の中に流れているからか、花街に生きてきた女性にひどく懐かしさを覚える。
 駒香姐さんの『ぐち』を聴いて涙がこぼれてしまうのは、身体の中にある遠い記憶がそうさせるのかもしれない。

 最後に、師匠とお姐さんに、私と三人の写真をねだってみた。
 お姐さんを真ん中に、師匠と私が両脇をはさんで。
 後日、出来あがった写真を見て「あーっ!」と声をあげてしまった。
 私が気づかないところで、師匠とお姐さん、しっかりお手々をつないではった。
 やられた…(笑)。
 でも、その写真を見ていると、嬉しさに顔がにやけてしまう。
 憧れつづけた人と一枚の写真に収まっている私。
 至福の時間を振り返って、あらためて思う。
 やはり、芸は人そのものだ。


愚痴じゃなけれど
これまあきかしゃんせ
たまに逢う夜の楽しさは
逢うて嬉しさ別れのつらさ
ええなんの烏が
ええ意地悪な
おまえの袖とわしが袖
合わせて歌の四つの袖
路地の細道駒げたの
胸驚かす明けの鐘
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