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師弟の絆

菊次郎さんのお話のおりに、歌舞伎を教えるというお話がありましたが、そういう点では、水口先生も竹三郎さんも、松竹さんのご英断で開塾された上方歌舞伎塾で本当に熱心にご指導をされていて・・・私がここでこういうのも恥ずかしいのですが、竹三郎さん、水口先生、本当にお二人とも歌舞伎がお好きで、歌舞伎全体のことを考えてらっしゃっていて、受け皿を深く持って下さるから、いつもストレートにお話させて頂くことが出来て、とても素敵なんですよね。
今後の塾の展望と言いますか、四期生の募集などについて、少しお話をお伺いしたいのですが・・・。

水 口「現在の三期生の卒塾発表会は、8月28日の大阪松竹座で予定をしております。
上方歌舞伎塾は、だんだん関西の役者を増やしていくというのが狙いで、本当に、だんだん、だんだん増えてきましてね。当初の狙いは五期ということでスタートしまして、そのうち辞めていく者もでるやろう・・ということやってんけど、辞めない(笑)。頑張っておりまして(笑)。
ですので、そのあおり(笑)といいますか、受け手の師匠方が何人を引き受けられるかという問題もありますので、四期募集に関しては暫く 様子を見ようという状態になっております」

私が印象深いのは、竹三郎さんが、塾一期出身のお弟子の竹雪さんを、皆がいる前なのに、ホントに本気で怒ってらっしゃいましたでしょ。
その後、偶々、竹雪さんと帰りの電車でお会いしましてね、「師匠があんなふうに本気で怒ってくれて、そうした師匠のもとに師事できて幸せですね」・・・みたいなお話をしたことがあるんですよ。
竹雪さんは、叱られた意味はもちろん、その竹三郎さんの本気の有難さもとても良く解かってらっしゃって、私はその夜のJRのガタンゴトンとした中でシミジミしたのが物凄く想い出になっています。
菊次郎さんは竹三郎さんにとって、お父さんであっても師匠、これは長いお付き合いですよね。

竹三郎「ええ、親子は一世、夫婦は二世、主従は三世という義太夫があるように、私ははじめその意味が理解出来なかったんですね。親と子は結婚したりしましたら自然に離れて行きますけども、夫婦は死ぬまで一緒に生きます。けど、師弟関係というのは、それ以上の縁(えにし)やっていうことがよく解かるようになりました。
まず、師匠に惚れないといけない。でも、人間ですから、短所、長所が見えますからね」

好きだからこそ憎たらしいというのもありますしね。

竹三郎「(笑)そうです。私も正直言ってここだけの話、近くにいるから、菊次郎という人の、物凄く嫌な面も感じていました(笑)。
とにかく、夜が嫌で嫌で・・・(笑)。暗くなって、お酒が入ると、ずーと話し出すんですよ。“ああ、始まった〜”(笑)。それが後から役に立つような芸談だったりするんですけど、今だったら感謝出来るんでしょうが、10代の子供でしたからね。大人にお酒飲んでグダグダグダグダ言われて、もうそれは、たまらん(笑)・・苦痛でしかありませんでした。“もう、分りました〜”(笑)ですよ。
だけど人間的に、また、目に見えないようなところで素晴らしいところがあることも解っておったんですね。ふっと考えると、私はこの人に人間的に“I Love”をしたんじゃないかと、惚れてるんやな、と思いました。人間的に惚れないと馬鹿馬鹿しいこともありますからね。“嫌やなあ〜”とは思ったりもしながら、菊次郎のためには何かしたいと思ってました。人を愛するというのには人間愛、夫婦愛、色んな愛があるんやから・・・。私は菊次郎が好きで、惚れておりましたね」

今は竹三郎さんがお弟子を持たれ、また、塾の講師としても、今度は教える立場で塾生を送りだしてこられました。
水口先生は、卒塾公演が終わって挨拶のおり、泣いておられましたね?(笑)

水 口「(笑)いえ、竹三郎先生も物凄く熱いんですよ。泣いてはりましたよ。
一期生の卒塾の芝居を脇の方で見てましてね、“ああ、よう成長したな〜”と思って見てましたら、だんだんジーンとしましてね、“泣きそうやな〜”と思ったら、下の方で、“グチュ”、“グチュ”って声がするんですわ。
ふっと、下見たら竹三郎さんが先に泣いてはった(笑)」

(笑)私はこの前、4月の南座の鑑賞教室を拝見しまして、三期生も立派になっておられたのでビックリしましたよ。正直、中間発表を観た時は“大丈夫かな〜”って心配しましたもの(笑)。

竹三郎「上方歌舞伎塾が始まった時に、一期生というのはマスコミにも取り上げられ、お客様からも温かい目で支援して頂き、とても騒がれましたでしょ。二期、三期となると、それは悪い意味ではなく、凄く自然で当り前のことになりましたから、後の子達は、先輩達と環境は違っても、比べられることは比べられて、少し可哀想には思いましたね。もちろん芸事ですから、三期生も全員同じレベルではあがってはこれませんが、それなりに出来る子は何とかやって来れているな、とは思っています」

8月28日の卒塾公演が楽しみですね。これは入場は抽選ですか?

水 口「ええ、また近くになったら、新聞などでお知らせをさせて頂くことと思います」

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