日々是ダンス。踊る心と体から無節操に→をのばした読み物 |
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文・写真
+ dance+編集委員会
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dance+とは
ダンスを楽しむ研究サークル。情報編集のほか、ドキュメント、ビデオ鑑賞会などをとおして、ダンスと地域、ダンスと生活をつなぎます。
- 古後奈緒子(メガネ)
窓口担当。守備範囲は前後100年ほど。
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- 神澤真理 NEW!
日常の中にある「おもしろそう」を発掘中。
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30 DB issue+”R40”review+preview
社会に巻き込まれるダンスとダンスをとおして世界に巻き込まれるチャンスについて
記事:メガネ
月ごとのチラシを持ち歩く身には、毎年2月、6月、10月は、なぜか最も荷物の膨らむ月。つまり、公演や関連イベントの最も重なるのがこの時期です。しばらくドキュメントのチーム活動が続いたこともあり、今回は滞っていたissue、review、そしてpreviewの3本だてでお送りしたいと思います。
01 issue Art Theater dBのこれまでとDANCE BOX のこれからについて
02 review 1人で立てるダンサーが一同に会する贅沢と困難 『R40』
03 preview 藤田一『visible/invisible』8月3、4、5日@shin-bi
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【issue】 Art Theater dBのこれまでとDANCE BOX のこれからについて
DANCE BOX現状報告会レポート 6月21日@Art Theater dB
6月21日にArt Theater dBで、DANCE BOX(以下DB)が拠点としているフェスティバルゲートの売却に関する現状報告会が開かれた。その場で発表された事の次第については、Art Theater dBのウェブサイト 「DANCE BOX近未来計画 〜ダンスボックスの現状と今後〜」 に掲載されている。ここでは報告会に参加した一観客の視点から、この問題についての雑感をまとめてみたい。
■ アートシアターとしての影響範囲
まずは、DBが一時的にでも活動の場を失うことで、その利用者がどんな点で困るかを、一観客の立場から言い表しておきたい。喩えるなら、それは良質のお米が近所で手に入らなくなるということにとどまらず、全国に供給しているDB産のお米が生産元からストップすることも意味している。
TORII HALLで始動してから、DBが関西在住の者に国際的に重要なダンサーの表現に触れる機会を提供し続けてきたことは、04年の大野一雄や今年のピチェ・クランチェン など、この舞台を踏んできたアーティストの顔ぶれを見れば明らかだ。さらに、ダンスに対する心構えさえ確かめられれば誰でも作品を上演することができる場、「ダンス・サーカス」を継続的に成立させたことで、後に全国で活動を展開するようになる関西の作家の多くが、この舞台で表現を磨き上げてきた。「ダンス・サーカス」から「セレクション」を経て、一昨年に立ち上げたばかりの「One Dance」まで。DBが全国へ、そして世界へとつながるダンサーのステップアップを後押しし、そのしくみが先駆的な成功例として注目されてきたことを、何はさておき確認しておきたい。
つまり、コンテンポラリー・ダンスというプロダクトの生産と流通にとって、DBの活動が滞ることの影響範囲は一地域にとどまらない。このことは、ダンスやアートが生みだすものをソウル・フードとする者にとっては、大げさではなく、食料問題と同じくらいの切実さを持っている。
■ 公共団体と非営利団体のパートナーシップの意味
一つの活動体が役割を全うするために安定した拠点を必要とするという一般論はさておき、この問題が持ち上がってからというもの、ダンスをプロデュースすることが目的なら、フェスティバルゲートにこだわらなくともいいのではないか、という声も耳にした。「何も莫大な光熱費のかかる場所でなくても」というものから、「市に家賃を払ってもらっていたのなら、市が払えなくなったら出てゆくべき」というものまで。経済に疎い者にとって、こんな風に事を家賃、大家さん問題で説明されると、なるほどそれもそうかと思う。けれどもそういった理屈なら、なぜ大家さんが非営利団体を店子にしたのかというあたりで混乱する。確か、大阪市はDBを含むNPOにとって、大家さんではなくパートナーのはず。で、その協力関係は何のために結ばれたのかと考えると、どう見ても、月○○億円といった家賃に見合う経済効果を上げるためではなく、むしろその全く逆で、家賃をそういった頭の中のソロバン玉がすべて飛びそうな額にしてしまうような、放っておけば多いところへどんどん集中する傾向を持つ資本の運動を、いったんはアートというかたちでひねり出した価値の小さな循環で緩和するためだったのではなかったのか。たとえ、実は大家さんが2人いて、小さな論理のために協同していたのは小さいほうの大家さんで、大きいほうの大家さんは大きな論理で動かざるを得なかったという落ちだったにしても。( 大家さん関連のお話はコチラ→)
■ 地域との結びつきが生みだす連鎖
こんな素人の見方で話を進めてはいけないのかもしれないけれど、もしアートNPOがそういった役割を認識しているなら、少なくともDBがフェスティバルゲートにこだわり続けた理屈はよくわかる。先に挙げたように、DBはダンスの領域で地域を越えて活躍するアーティストを生み出し育てる傍ら、Art Theater dBに移って後は積極的に劇場の外に出て、地域との関わりの中で、地域にとっての価値を模索してきたからだ。そして、その最近の例である「ビッグ盆! 」ひとつ取りあげても、まちづくりとか、地域コミュニティーの再編とか、伝統の再生とかいった点で、アーティストやアートに関心のある人ばかりではない、多くの人が満足するような成果を残している。その経済的な波及効果なるものを見積もる力は筆者にはないが、逆に、DBがArt Theater dBを去ることで無駄になるものの連鎖ならわかり易い。DBにとっては、お金には換えられない地域との信頼や協力関係だけではなく、10年間という当初の計画にもとづいてArt Theater dBの整備のために行った返済途上の相当額の投資分(順調にいっていれば10年で完済できたらしい)が脅かされる。一方で地域にとって、行事の継続から見込まれた世代間や地域のつながりとともに、1000人という参加数から見積もられる経済効果も虚しくなる。さらに「ビッグ盆!」が1回こっきりとなってしまったので、盆踊りの復活に一役買った婦人会の会長さんは一市民としてリーダーシップを発揮する場を失い、今年の「ビッグ盆!」のために新調した浴衣も無駄になってしまった。
■ 社会における小さな価値の連鎖のために
話の流れで、よくないほうの連鎖をたどってしまった。言いたかったのは、DBが、質の高い芸術作品を扱う劇場のひとつというだけでなく、ご近所づきあいのような具体的なかかわり合いを通して、地域や様々な社会領域におけるプラスの価値の連鎖をデザインしてゆく組織だということだ。DBと他のNPOとが今回の公募に際して練り上げた「新世界アーツパーク未来計画」の主軸となった、 「クリエイティブ・シティー」、さらに「ソーシャル・インクルーシヴ」という概念は、なじみのない横文字なので広く理解を求めにくかったのかも知れないが、簡単に言ってしまえば、このような社会の中のいちいちお金に換算しきれない価値の連鎖を観察し、その実体に名を与えたものなのだと思う。DB報告会の後半には、この地では未だ理念であるこれらの連鎖を、将来的に目に見える現実へと変えてゆくような期待を抱かせるいくつかのプロジェクト案が発表された。その実行の拠点となる家は、現在進行形で物色中。でも推進する人材は健在だ。引き続きDBの動きに注目してゆきたい。
Art Theater dBの最終イベントのお知らせ
“Art Theater dB”Final day「Art Theater dBお別れ会」
2007年7月31日(火)13時〜23時
2002年10月にオープンして以来4年10ヶ月。関西をはじめとする国内外の数多くのアーティストが豊かな表現を生み出し続け、そして沢山のお客様に愛されたArt Theater dBが7月31日をもって閉館します。
その最後の日を、皆様にゆっくりお過ごしいただきたく、お昼から夜まで開場いたしますので、ご都合のつく時間にご来場いただき、さまざまな思い出をめぐらせて下さい。飲食物、ダンス、音楽等、なんでも持ち込みOKです。カフェも営業します。
DANCE BOX11年目のまた新たな旅立ちです。
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