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街は誰のためにあるのだろう?ベルリンと大阪が持つ相違点を検証したいと思います。
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+ 永原達哉
プロローグで述べた通り、祖父の店で修行したこと。
 ヨーロッパで得た経験は非常に大きな糧となっています。


vol.7 街と人はどう付き合えば良いだろう?

vol.2でも書いたが、ドイツの歴史は凄まじいものがあった。日本という国と比較論じ、両者が似ているという意見は多々あるが、アジアとヨーロッパという根本的に違う土壌においては、そこに住む両国民の気質も思想も違うのは当然である。これら両国が比較されるのはごく楓ハ的な理由だと思う。それは双方勤勉であったり、世界屈指の工業立国であったり、そして敗戦国であるという部分ではないだろうか。しかし住んでいくために必要なルール作りや取り組み方は違い、両者それぞれに是非がある。
 

 
 

 
第2次世界大戦でヨーロッパ周辺諸国に行ったドイツの所行に対してはとても厳しい批判が集中した。単に賠償金を支払うだけではなく、国家として2度と間違いを犯さないように”信用回復”を求められた。ドイツは元来持ち合わせている”完全主義”的姿勢が功を奏してか、ヒトラーの時代の失敗を徹底的に排除した。ドイツは東西ドイツ統合後、国を16の州に分けた。そしてあらゆる権限を各州や都市に分散させた。そして民間人に出来るだけ行政に参加してもらう制度を作った。それは地域評議会というもので、州や都市を小区域に分けているのである。日本で例えると町内会なのであろうが、持っている権限が全く違うのである。ドイツの地域評議会は法律で認められており、会員もその法律に従って選挙で選ばれる。よってかなり政党色の濃い組織なのである。日本の町内会はどうかというと、町内の親睦を基本にした集まりであり、人選も選挙ではなく”推薦”が殆どであろう。小社会の付き合いの中で義務的に町会に参加している人も少なくないと思われる。また政党色の濃いドイツの評議会では当然自分が所属する組織に優位になる活動を行い、公平な立場で街に貢献するという理念から逸脱することも多々あると思われる。政治というものに嫌悪感を抱く日本人が多い中、政党色の濃いこのような制度はまず日本で受け入れられるとは思えない。しかしドイツで行われている”責任の所在”を法律で定め、”街は住んでいる者が変えないといけない。守らないといけない”といった姿勢は見習うべきだと感じる。

ドイツはこの10数年という近い過去に国家的に大きな変化があり、また首都がボンからベルリンへ移るという大事業も経験しているため、思い切った決断も成し得たのであろう。日本でもやっと法律を改編し始めているが、時遅しといった感がある。ある専門家が苦言を呈していた。「日本は教育改革にしてもとにかく極端だ。ゆとり教育を唱えると、大幅に教育水準を下げる。何でもかんでも平等を唱える。生徒も教師も混乱し、そして社会の過度な目が容赦なく降り注ぐことで、本来の教育の形が壊されているのが現状だ。
行政が権限を持つのであればもっと民間に対し責任を持ち、勇気ある決断が求められるべきだ。」そう、行政はとにかく極端なのである。行政にしてみれば、あらゆる場所からあらゆる要望が提出される中で決して極端な行動だとは思っていないかもしれない。しかし我々にとってみれは”なぜもっと自前に細かい動きを示さず、それを公開するような措置を取らないのか?” 一般の者にすれば行政の執行などは”突然”としか映らない。

ドイツの地域評議会を参考にして”町内会”をもっと地域社会の封荘艪ノ出せないだろうか?立場の違う新旧住民に対して意見を継続的に聞き、それぞれが思う地域社会への提言をまとめる。日本での連合町会が地域評議会と規模などが同じだと想定すると、先ず1丁目、2丁目等の小地域(≒町会)で起こる出来事や意見をまとめる者を置く。それらの意見をその代侮メが連合町会定例会議などでまとめる。決議内容であったり、行政への勧告、要望する形は街の者全てが閲覧できる方法を取る。また決議に際しては各機関の専門家などの意見を伺う公聴会も開き、客観的な判断を持つ努力をするのである。

地域によってはすでに行っている部分もあるだろう。ただ一般者が知る機会が少なすぎる。閉鎖的と言われても仕方ない。街の変化は殆どが人為的なものである。街が不作為に繁栄すればそこには負の部分も大きく広がる。負の部分が広がると、街から人は去り(去って行く人に限って残って欲しい人だったりする・・・)、繁栄前には無かった問題を生みながら荒んでいくのである。
次章ではこのあたりを検証してみたい。


参考図書:コミュニティの法理論/名和田是彦著
     ドイツの政治日本の政治/加藤秀次郎著

 

 
 

 

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