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長屋再生店舗『心裸』の内部。仕切りを取り去り、玉砂利を敷き詰めた和みの空間が広がる。和風プラスアジアンティスト。 |
宝物が眠る町
「町家の辻」に戻って東へ。石畳を敷き詰めた路地は竹細工で装飾された典雅な佇まい。「路地マップがあれば楽しいでしょうね」と中嶋さん。
突き当たりに町家が見えてきた。右にはカギ型に折れ曲がった坂道がある。
観音坂。フラットな大阪平野では貴重な上町台地ならではの光景だ。絵筆を執りたくなる絶好のスケッチポイント。ふたりは坂の上から町家をながめながら「路地ごとにお地蔵さんかお稲荷さんがある。大阪の原風景、ここにあり」「季節の移ろいが感じられ、イベントも組みやすい。宝物がまだまだいっぱい詰まっているという感じですね」。
坂を上りきると谷町筋。南へ進めば空堀の商店街と交差する。平日の昼下がりながら地元の買い物客が行き交い、商店主との会話も弾む。だらだらと西へ下って、南へ少し上ると、長屋を改造した集合店舗『惣』。オープンは今年七月で、六波羅さんが代表を務める「からほり倶楽部」がプロデュースした長屋再生ショップである。
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「石丸会」の門の前で。小さな門が路地と表通りと適度に分断し、路地で暮らす住民の連帯感を育んでいるという。都市生活を知りぬいた大阪人の知恵だ。 |
新旧の共生で賑わいを
木造二階建ての店舗に五つのシッョプがあり、一階の「クーデリーカフェ」でティータイム。
「この長屋は解体作業の見積もり中に、私が偶然通りかかり、解体するのを待ってくれとお願いしたところから始まるんです」
「柱一本で家の履歴が分かる。子どもさんの身長を測った柱の傷も大切な歴史です。新建材を張ると隠れてしまいます」
「からほり倶楽部」には「新旧の共生」という理念があるという。
「人も建物も新しいものと古いものが共生できてこそ、町が賑わいます。かつて空堀には東賑町、西賑町という町名がありました。町名どおり、新旧の共生で賑わいを取り戻していきたい」
歩けば歩くほど、味わいが増す町だ。
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