工場の煙突、おおらかな川の流れ、橋の向こうに沈む夕日…。どことなく懐かしい風景が広がる渡船場。古来より、水の都として栄えてきた大阪には、人々の往来のための渡船場があちらこちらにあった。橋が掛けられるにつれ、渡船は次第にその数を減らしてきたが、今も大阪市には、市が運営している8か所の渡船場が健在だ※。これらは道路の一部という認識がなされ、現在はすべて無料で利用できる。中でも最も古い歴史を持つ渡船場のひとつが、港区・福崎1丁目と大正区・泉尾7丁目、尻無川に隔てられた2つのまちを結ぶ甚兵衛渡船だ。

 

※各渡船場の詳細は

大阪市建設局HP

http://www.city.osaka.jp/kensetsu/miryoku/tosen/toppage.htm

大正区HP

http://www.city.osaka.jp/taisho/spot/ship.html

浪花百景より「しりなし漆づつみ甚兵衛の小家」

昔、尻無川の堤は紅葉の名所として知られ、多くの観光客が訪れたという。甚兵衛という名の人物によって設けられた渡しには「蛤小屋」と呼ばれる茶店もあり、名物の蜆や蛤を賞味する人で賑わっていた。
 
 

大阪市建設局発行の「渡船場マップ」。現在運航中の渡船場をはじめ、渡し場の跡も掲載されている。各渡船場、大阪市内の各区役所、梅田、難波、天王寺の各大阪市サービスカウンターで無料配布されている。