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氷室神楽 松岡永子
「大地を踏みしめ、沈みこむように舞う」というサブタイトルにちょっと荘厳なものを予想していた。
しかし、お神楽らしく、うきうきと楽しげ。もともとこれは神さまとの交流のために参加するもので、ホールなどで見るものではないんだが、ま、神さまもかたいこと言わずに許してくれるだろう。そんな風に思える親しげな神さまは、やはり日本の神さま。創造神やら絶対神ではない。

 お神楽は比較的単純な旋律にのって舞う。つけている面はずいぶん大きい。目や顎も動くし、能楽よりは獅子舞にイメージ的には近い。
 舞終わって、太鼓が打ち鳴らされ、台詞。台詞の部分が音楽とははっきり区切られている。舞の後で息が切れているのもよくわかる。稚気あふれる、といった感じ。

 プログラムは「四方清め」「山の神」「日御崎」「八頭(やとう)」
神さまのやってくる場を清めるための舞、四方清め以外は、記紀にある物語を題材にしている。

 プログラムの最後、ヤマタノオロチ退治の「八頭」。
 オロチに食われるはずだったテナヅチ・アシナヅチの娘イナダをスサノオが助けて妻にする話。草薙の剣も手に入れる。
 登場人物の中で一番神さまらしいのはテナヅチ。台詞の抑揚が謡みたいで風格がある。動きは舞楽の右舞の演目に似ていると思った。
 スサノオの動きはなんとなくファンキー。そういう振付なのか、舞手がそうなのか、判断つかないが。
 オロチ役は一人。蛇踊りのように何人もで胴を支えるのではなく、長ーい尻尾のある着ぐるみに入って、とぐろを巻いたり尾を引きずったりする。たいへんそう。
 オロチを退治すると、その首を切り落とし(つまりオロチの面を取り)それを掲げて勝利の舞を舞う。
 この演出は見たことがある。京都神泉苑の無言劇・大念仏狂言会だ。あの舞台でも、退治した怪物の首を切り落とすふうに面を取り、掲げる。どちらがどちらの影響を受けたというわけでもないだろう。人間の考えることなんてたいして変わらないということだ。

 隣の席のおじさんは、見終わった後「(同じ島根県でも)石見のオロチは火を噴くんだ」と自慢してた。石見の人なんだろう。機会があればそれも見てみたい。

 終演後、ロビーで保存会の人たちが面を見せたり解説したりしていた。意外とみんな若い。今日は舞わなかったけれど高校生もいますよ、とも。
 現在、古典芸能になっている能や文楽は抽象化・洗練の粋だ。それが老舗料亭の懐石料理だとすれば、各地に残るお祭などは家庭の行事食(お雑煮とかちらし寿司とか)みたいなものか。時代の変化の影響を受けやすいのは後者だろう。芸能は芸能だけで存在するわけではない。それを支える共同体がなくなってしまえば、芸能だけを保存することはできない。神楽の保存会に子どもがいるということは斐川町では共同体もまだ機能しているのだろうと思った。

 プログラムと一緒に入っていたお餅もおいしくいただきました。ごちそうさまでした。


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