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音楽を作るように演劇をつくる! 栂井理依
 いろいろな音、いろいろなリズムがあって、ひとつの音楽が生まれる。
 同じように、いろいろな役者たちの個性がまぜこぜになって、ひとつの芝居が生まれる。

 そうした意味で、毎回、関西の小劇場で活躍中の若い役者たちを集めて公演を行う演劇ユニットoriginal tempoは、役者たちの新しい魅力を伝える一方で、とっても純粋な「芝居」を見せてくれる。
 閉館前の扇町ミュージアムスクエアで上演された前作「オセロ」は、劇場の半分近くを舞台とし、大人数の役者たちが入れ違いに出入りしていた。幕間には実際に生演奏も行なわれた。役者たちの個性が奏でる旋律も目まぐるしく変化し、観客は長い楽曲を一気に聴き終える楽しさを味わうものだった。
 対して、本作「インディアン・ポーカー」は、役者の数は5名、一曲を通してあまり強い変化をつけず、その個性が絡みあって生まれるグル−ヴそのものをじっくり聴いてみてください、という感じ。ユニットを主宰する劇団☆世界一団の作・演出でもあるウォーリー木下は、パンフレットにて役者たちを演奏家に例えているが、元々、芸達者で知られる面々でもあり、自らの個性を見極め、音を鳴り響かせるところと共鳴するところを使いわけるところなど、さすがだった。

 設定は江戸時代。天然ボケの兄妹、赤星半之介(トランペッタ−)とおゆき(ボーカル)。そのおゆきに恋する居候の坂口守佐衛門(ドラム)と、働かないのに大食いの金替市郎兵衛(ベーシスト)。その隣人で、宇田泰継(ピアニスト)。
 世は泰平、武士と言えども手柄をたてる術もなく、経済的に豊かではない彼らは、参勤交替の行列が来るという噂を信じて待ちながら、のらりくらりと暮らしている。
 ある日、おゆきは、夢で見た異形の生物が、象という動物だと知る。近所の井戸端会議で、将軍への献上物として象が参勤交替の行列に混じっていると聞いたおゆきは、江戸へ行く決心をする。止める赤星。動揺する坂口を金替と宇田が応援して、恋を告白させるが、あっさりとふられてしまう。
 坂口は言う。「これだけ待ってても来ないんやから、もう参勤交替の行列なんて来ない」−。参勤交替の行列は、彼らにとってかなうのを待ちのぞむ「夢」、人生を変えてくれる「希望」。しかし、その現実を悟り、何の変化もない暮らしに戻ったとしても、彼らはやっぱり行列を待ち続ける。

 淡々とした彼らのグル−ヴ、時々、強く鳴り響く音が、現実の私たちの日常と重なり、どことなく切なく、なんとなく心地よい。
 音楽を作るように演劇をする。それは、舞台に立つ役者たちの個性をひきだすという芝居の原点と結びつき、より純粋な作品づくりへと向う気がする。


キーワード
■コメディ
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