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パフォーマー
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会場
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公演日
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ハックルベリーにさよならを |
松岡永子 |
今年もHighschool Play Festivalが開催された。数校の合同公演もある。校内公演や学校毎に出場するコンクールよりも多くの人に出会い、いろいろな経験ができるかもしれない貴重な場だ。舞台上演だけでなく、スタッフのワークショップなど地道な活動の一部はHP(http://www.eonet.ne.jp/~yoshihikoyo/index.htm)でも見ることができる。 前日のレポートをプログラムに挟み込む機動力・熱意にも感心する。今年は他校生による観劇レポートもあって楽しい。 高校演劇でよく上演されるキャラメルボックスの作品。人気があるだけあって、高校生が誠実に演じると相乗効果でその良さが引き出される気がする。一人一人の、一つ一つの気持ちを丁寧に作っていてすがすがしい。 もうすぐ六年生のけんじは母と暮らしている。童話作家の父は離婚して家を出ており、面会日にしか会わない。家庭教師の大学生からカヌーの面白さを教えられたけんじは、乗りたくてしょうがないのだが、中学生になるまでは我慢すると母親と約束する。ただ面会日には、母に内緒で井の頭公園で池のボートを漕いでいる。 ある面会日。父親の部屋に行くと、編集者・かおるがいる。けんじはかおるに好意を抱きながらも父の再婚を許せない。反発したけんじは大雨の後の池でボートに乗り、そのまま水門を抜け神田川を下る。 けんじのボートは転覆することもなく無事に隅田川に着いた。 かおるは父と結婚しなかった。 それから十年。「ぼく」は当時のかおるの部屋に電話をかけつづけている。あの時の自分を許せない「ぼく」の中で時間は止まったまま、けんじはうずくまったままでいる。 電話があの日のかおるに届く。「許してあげてね。あなた自身を」というかおるの言葉に時間が動き出す。「ぼく」はけんじを励まし、けんじは「ぼく」から離れ、一人で歩き出す。 「ここから出ていきたい」と水門から川へむかい、「ぼくは一人でやっていける」と言い張る少年が、「一人でやっていく=自立」とは孤立することではないのだと理解する、わかりやすい成長物語。素直に感動できる。 あべちかこ(「サザエさん」の花沢さんみたいな女の子)役の迫力はインパクト十分だし、家庭教師とかおるの二役を演じたOGはさすがにうまい。なによりけんじが瑞々しく爽やかでいい。 傷つきやすさ、傷つけやすさ、純粋さ、頑なさ、そんな自身への歯痒さ…そういった幼さを自分自身のものとして表現する。背伸びするのでもなく、自分からは遠くなってしまったものを作り上げるのでもなく。こんな等身大に近い表現ができるのはこの年頃だけかもしれない。
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