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進化するコンドルズ 栂井理依
 バナナを一房テーブルに置き、「こうやって俺が1本食べ始めるとね、見てる人は、次どうするかなって気になるでしょ。これ全部食うのかな、とか。それが、ダンスなんですよね」と、近藤良平は、あるドキュメンタリーTV番組で言った。そして、わかりにくくてすみません、と照れ笑いをした。

 いや、わかりにくいようでいて、実はとてもわかりやすい答えだと思った。近藤にとっては、まず、日常の何気ない風景や動作が出発点。そして、その中から生まれたひとつの動きを、ひとやものとの関係性を起点に、どう発展させていくかが鍵となる。その過程で、見ている人の予想をフェイクして動いたり、敢えて期待通りに動いたり。日常は非日常のパフォーマンスへと変化し、またある瞬間に、簡単に日常へと戻っていく。そのときの変容する身体と変化する発想こそが、ダンスなのだと。

 そして、近藤が主宰するダンス・カンパニー「コンドルズ」は、まさにそんな舞台を見せてくれる。学ランを衣装に汗だくで踊る、個性豊かな男たち。(平均年齢30歳以上、はげやデブもいるとなれば、その男臭さは並大抵ではない。)今回の会場となった円形ホールの四方八方から、彼らは縦横無断に現れて、舞台にかけあがる。けっして踊れるメンバーばかりではないのだが、いわゆる鍛えあげた身体から生み出される動きではなく、日常の身体から生まれる不器用な動きは、舞台という非日常な局面において、なんとも言えない滑稽さと爽快さを感じさせ、つい惹き付けられてしまう。

 そして、潮がひくようにダンサーたちが姿を消したかと思うと、突然、がらりと変わって、人形劇やコント、映像が始まる。私たちは、さっきまでのダンスシーンとはまったく違う空間へ連れて行かれる。これは、単純にネタとして面白いだけでなく、さまざまな空間での男たちの異なる身体の在りようを提示することで、彼らの身体の豊かさを際立たせようという戦略に他ならない。
 私が初めてコンドルズを観たのは、3年前だったが、人気が急上昇し、日本全国、海外公演を経て、メンバーたちはどんどん生き生きしてくる。ダンスは巧くならないが(?)、大舞台で客を惹きつける技はすっかり習得したのか、宇宙レコードの小林顕作や、プロデューサーも兼ねる勝山康晴は、ダンス公演ということを忘れさせるほど、キレのいいネタ、秀逸な演技を披露する。今回は、トップ・オブ・ザ・ワールドがテーマ。円形ホールを生かし、四方面を舞台として、背景や人形の組み合わせを自在に変えて進行する空間交替のシュールな人形劇。北極での犬ぞりコントや、姥捨山で出会う世界のトップたちの対決など、途切れる間もなく笑わされる。

 近藤自身も、時に股引姿で、時に女装をして、コントに登場し、ばかをやる。しかし、近藤の場合、それもまたダンスなのである。そこでは、しなやかに伸びた身体、どんなに早くてもブレのない小気味のよい動きは、影を潜める。円形ホールで、四方からライトを浴び、片手を床につき、伸びやかに空(くう)へ足を広げていくカッコいいシーンと同様に、である。

 踊れない男たちの不器用なダンス。そして、ダンスと演劇、映像と様々な空間を行き来する身体。
 そのように様々な空間や場面を行き来して、変容する身体と変化する発想。その自在さが、近藤良平とコンドルズの真髄だ。そして、その魅力にとりつかれたら、その動きから目が離せなくなる。

キーワード
■コンテンポラリーダンス
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