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降り続く雨の癒し 西尾雅
1幕で提示された謎が、休憩を挟んだ2幕目で明かされる。偶然発見された亡き父の日記をめぐるサスペンス。遺された姉弟と父の友人の息子が、2幕では父と母、友人自身に扮す。暗号のような記述に推理を働かす姉弟役が、35年前に遡ってその両親を演じ真実を明かす。3人全員が2役を演じる戯曲構造に工夫があり、3人の緊張した関係と過去の謎を1幕の密な会話劇で一気に引き込んで、2幕は深遠な心理劇を丁寧に描く。

著名な建築家として名も財産も残した父。成功の発端は、友人と2人で始めた建築設計事務所の初作品が好評だったこと。若手設計家コンビは成功し、友人亡き後も父は多大な作品を残す。母はまだ生きているが精神を病んだまま、寡黙のままに死んだ父ネッドと早くに逝った友人の若き日々を子供の彼らは知らない。「3日続きの雨」「セオ(友人)が死んだ」と素っ気なく印された日記に思いを馳せるが、一周忌の父を鎮魂するように息子ウォーカー(高橋)は日記を燃やしてしまう。

仕事を始める際に事務所とした古アパートの部屋を、成功して後も父は残す。今は使われない埃被るその部屋で発見された日記が炎あげるや、2幕では野望と不安に満ちた若き父たちの活気あふれる現場に場面転換される。自信家のセオ(浅野)は恋人リーナ(神野)や仕事を誘ったネッドに横柄に接し、ときに暴力すら振るう。が、内心彼は初の大仕事に詰まり、不安いっぱいで捌け口を求めているだけ。セオが事務所を留守にしたある日、突然の雨を避難するためリーナが飛び込んで来る。濡れた服を乾かす間に、当時吃音症だったネッドとリーナは打ち解ける。雨は3日降り続き、2人は結ばれる。突然帰還したセオに2人は驚くが、設計のアイディア出ずに戻ったセオは怒るどころか2重の災難に打ちひしがれ、仕事放棄を言い出す。今までは自分に自信なくセオを頼っていたネッドがリーナに励まされ、自分の建築プランを示す。ベッドから起きて設計机に向かうネッドを横に立って見守るリーナ。全裸を白いシーツでくるむ彼女はギリシア神話の女神のように輝いている。

典型的なDVタイプのセオから2人は救われ、セオは失望のまま路上で雨に打たれているところを、やがて伴侶となる女性に出会う。彼もまた雨に救われる。短い言葉がすべてを伝えると日記を書くネッドは言う。寡黙な彼はわずかな言葉で豊穣な世界を視る。それは、建築においても変わらぬ彼の表現方法だったに違いない。シンプルでありながら住む人の夢が膨らむ建物。金や名声を望まなかった彼の本心は息子の名に受け継がれる。世界放浪中で父の葬式にも間に合わなかった彼はウォーカー、世界を歩き視る人。それこそが父ネッドのあこがれだったのだから。

ほぼ同じスタッフによるシアター21とひょうご舞台芸術は、最新の海外戯曲を紹介して味わい深く、考えさせられることしばしば。今回もごく自然な会話と仲いいゆえの葛藤を、横に居合わせ見つめている気分にさせる、役者3人も熱演。なのに、良心的だが地味な作風のせいか、この日も客入りは約半数。いい作品さえ作れば客は入るという前提がくつがえる事態。どうすれば動員は増える? それこそ全関係者永遠の悩みでしょうけど。

キーワード
■家族 ■サスペンス
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