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毒のある現代の悲喜劇 西尾雅
元遊気舎(1999年入団)の稲田真理が立ち上げたソロユニットの旗揚げ公演。独特の色気を持ちハイテンションかつエキセントリックな演技で客演にも引っ張りだこの個性派女優の作・演出作品は、意外にも直球テーマのブラックコメディ。自殺サイトで知り合った男女4人は決行を1ケ月後と定め、準備の会合を重ねる。が、秘密に気づいた隣人が介入し、計画は挫折する。

自殺サイトはいかにも今日的な題材だが、小集団の誕生と崩壊は昔からの演劇テーマでもある。ギクシャクした最初の出会いからしだいにコミュニケーションが深まる様子や集団自殺に向けての準備が時系列に沿って描かれる。本気をアピールするため自殺に思い至るまでの悩みを一同で告白。両親の離婚、家族愛の薄さ、家庭内暴力、きょうだいとの比較、干渉し過ぎる母親への嫌悪、経済的貧困など深刻な状況をそれぞれが打ち明ける。

彼らは互いに相手の悩みを知り、自殺という共通の目的を持つ同志のつもり。ひとりではなく集団での自殺を選択するのは、死に際しても仲間が欲しいから。孤独なはずの死すらも誰かと共有しなければ実行できない彼らの究極のつながり願望が悲しい。だが、つながりを求める彼らが本当に殻を打ち破り、自分をさらけ出しているとも思えない。

いい人と近所で評判の隣人が彼らの目的を叩き潰す。集まりを不審に思い、事情を察知した隣人は決行の当日、彼らに刃を向ける。死にたい奴は殺してもいい。いい人の仮面に隠された隣人の暴力が4人を襲う。

自分で死ぬのはいいが、殺されるのはイヤ。自殺志願組も激しく抵抗、争いの末に自殺志願組3人と襲った隣人は死ぬ。ただひとり生き残った女は自殺する気も失せ、ケータイで実家に戻ると告げる。が、その時、巨大な地震が襲い、生き残った彼女を飲み込む。

実際の事件にインスパイアされた現代の寓話。自殺決行に至るまでの集まりはまるでサークル活動のノリ。生が退屈なあまり死をゲームのように考える。そのツケを全員が払うことになる。殺されかけ、死を実感してようやく生の本能にスイッチが入る現代人の性。時既に遅し、人智を超えた災厄に押しつぶされる生への執着が皮肉だ。

いっけんフツーの人が集団自殺を図り、いい人が簡単にキレて人を殺す。共倒れに終わった両者が抱える闇は表裏一体。地震よりなお深い心の亀裂だ。問題作を引っ下げての旗揚げには好感を持つが、キャスト面で劇団を主宰する石原正一(石原正一ショー)、山浦徹(化石オートバイ)、sundayの看板・赤星マサノリと年清由香と実力ある客演陣頼りなのは残念。

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