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生命がテーマの問題作 西尾雅
初演は劇団としての活動は1年間休止中の02年、主催は大阪市で永盛丸プロジェクトと銘打って近鉄小劇場(以下近小)で。劇団員以外の出演者は宇梶剛士、西田シャトナー、福田転球、松本キック、池田祐佳理など、ワークショップからの応募者を含め総勢40数名の大所帯。ラストで舞台を回転させるのは総員がかりの人力、関西小劇場上げてのお祭り騒ぎだった。

今回は純劇団員(客演1名)での再演。劇団がウルトラマーケット(以下ウルマー)をホームグラウンドにして久しいが、しだいに設備も整えられてきたこの空間になじめないものを実はずっと感じていた。かつてのOMS(扇町ミュージアムスクエア)では整理番号順の入場と桟敷がお約束、いったん着座しても「ヨイショ」の掛け声で場所はどんどんズレて行くのが常。隣客と足が触れ合う窮屈が客席の一体感を生み、舞台との緊密まで呼び寄せていた。

椅子席に変わり、床に段差もあって観劇姿勢は楽になったが、天井の高いウルマーは舞台が遠くに見える。舞台と客席の隙間から空気が拡散する感じなのだ。が、今回は初演がキャパ数の多い近小だったことと脚本にも手が加えられたことでウルマーが身近だ。

今回も盆回しこそないものの、劇団得意の人力で装置を動かす場面転換は何度も複雑になされる。生きること、芝居することはいかに体力勝負かがそこでもわかる。

マッドサイエンティストの人体改造医メツとレツ=2人の滅裂博士(をフィーチャーした前作「滅裂博士」=07年5月公演は、初演のスピンオフであり、本再演作のプロローグでもある)がメスを振るう恐怖の手術室。いっぽう、交通事故で運び込まれた3人の重傷患者がいる別の病室。出生の途絶えと共食いで飼育動物が絶え、廃園となった動物園。地震予知を唱え避難を勧告する研究者と根拠がないと拒否する市の防災課員の対立。男たちが一番風呂の順番を裸で待つ銭湯の脱衣所。

錯綜する複数の現場から血と水がテーマとして浮上する。生命維持に必要な輸血、子孫に継承すべき一族の血。水もまた生命維持には欠かせない。銭湯の異常な温度上昇から、見えない地下のマグマ活動を予見する研究は当たるのか。血液検査で自覚のない病気が判断出来るように。

けれども、医学や物理など科学の進歩は、たとえばクローン培養など生命倫理のあやうさをも抱える。臓器移植のネットワークや妊婦が緊急入院できない救急システムも不備だらけ。

仮死状態だが、実はその間幽体離脱している患者たちが登場する。彼らは空間移動はむろん、時間移動も出来るらしい。けれど、手違いで彼らの臓器が移植に提供される。元の肉体を失った魂は戻ることが出来なくなってしまう。

廃れた動物園にいた動物とは人間のことらしい。科学をもてあそび、出生率は低下し、仲間で殺し合いを続け、ついに絶滅した人類。檻の前で、檻の中か外かわからず呆然と彼らは立ち尽くす。幽体離脱して見たそれが自分たちの未来なのだ。

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