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演劇通人のお座敷遊び 西尾雅
SF風のタイトルだが、舞台はコンテナが山積みされた港湾岸壁。その隅はおサボり中の労働者(本多力、諏訪雅、石田剛太)のたまり場。今日も彼らや二日酔い気味の行きつけの店の女のコ(山脇唯)が、くだらない会話で時間をつぶす。が、いきなり日活映画調のアクション展開になる。

人気がないここはヤクザにも好都合。ドジを仕出かした仲間(永野宗典)がコンクリ詰めのまま連れて来られ、海に突き落とそうと急かすチンピラ(土佐和成)を組幹部(中川晴樹)が押しとどめる。意外と気弱な幹部は、専門の落とし屋(角田貴志)に落とす仕事を押しつけ、自分は逃げる。

彼らにとってここは麻薬密輸の大事な現場、取引の件で今も幹部に連絡が入る。いっぽう、姉を探しに店でバイト中の妹(松田暢子)もやって来る。彼女に告ろうと近づく労働者、コンクリ詰めで身動き取れぬドジ男、お気楽なおサボり労働者連とヤクザ軍団が入り乱れるが、林立するコンテナが隠れ蓑となり、お互い相手に気づかぬお約束のコメディが展開される。

が、悲惨な当事者以外は笑える思いっきり日常レベルのすれ違いサスペンスはさらに一変する。突然現われたUFOがコンクリ詰め男を空中に吊り上げる。実は、政府は高度に知的な地球外生命と秘密裏にコンタクトを取り、始末に困る放射性廃棄物の処理を依頼、ここはその秘密の積み出し基地でもあったことが明かされる。

が、事情を知らない民間人たちは、先ほどコンテナ内の地球外生命の子供を気味悪がり、思わず殺めていた。それがバレ、まだまだ野蛮と見なされた人類は見放される。こうしてエネルギーや環境など諸問題の解決は自分たちでしなければならない仕儀となる。

それにしてもすべてを極秘に行い、汚れ仕事は丸投げする政府の変わらないこと、そして政府役人(酒井善史)や通訳(西村直子)の官僚丸出しの冷淡なこと。それはヤクザも、私たちを代表するおサボり組も同様だ。日々に追われ、問題の根本的解決を忘れている私たちは宇宙の笑われ者なのだ。

見どころは大がかりな装置転換。巨大な積み木のようなコンテナ群がテント芝居の屋台崩しさながらに移動する様は壮観だ。前半、生身の人間が足場を伝いコンテナ上によじ登る姿との落差が効果を上げる。第14回OMS戯曲賞最終候補に残った「Windows5000」でも、超過密な集合住宅をラストで取っ払い、舞台を元の公園に変身させてあっと言わせたが、舞台全体をトリックに仕立てる手腕に驚かされる。

今回もエネルギーやらエコなどの諸問題を取り上げながら、日常の視点は見失われない。だからこそ、お笑い満載のメルヘンSF風エンタメにまぶされた社会批評が余計に苦い。

仲間内のムダ話の延長のような会話もヨーロッパ企画の大きな特徴だ。平田オリザ(青年団)が提唱し、岡田利規(チェルフィッチュ)らによって進化を続ける現代口語演劇の流れに関西特有の笑いやボケを取り入れる。全体の構成はパズルやゲーム感覚のロジックが貫ぬかれているが、意外と骨太なその土台にゆるい会話が乗る。

千年の都そして大学の街でもある京都らしい知的な構成と取りとめもない会話。祇園という芸舞妓を交えたお茶屋遊びのメッカを抱えるこれも京都のDNAか、ヨーロッパ企画こそ演劇通人のお座敷遊びといえよう。

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