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パフォーマー
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会場
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公演日
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髪のほてり |
松岡永子 |
高度経済成長だ、万国博覧会だ、と浮かれた時代。夢を見ている世間の景気のよさからは少しはずれたステテコ横町。その一角にあるバーを中心に、この吹き溜まりともいえるような場所に出入りする人間たちをコミカルに描く。 バーのママは一人で働きながら親の遺言どおりに弟を大学に通わせている。弟の関わっている学生運動などはヤクザの出入りと同じようなものと心得ている。この店には奥に秘密の部屋があって別の商売もしているらしい。 隣の店のママは高利貸しをやってかなりあくどく稼いでいるようだ。 それぞれの店のママは罵り合いながら、互いに尊敬し信頼しているようすが見える。他人に寄りかかったりせず、生きていくためには泥をかぶることもいとわない覚悟に、通じるものがあるのだろう。 うわべをきれいごとで飾り、見た目だけを整えようとする世間の風潮とは正反対のありかただ。 男らしく生きたいとヤクザになった男は、トルコ嬢にならないかと店で女の子を誘っている。東大卒・元大蔵官僚を自称するおかまと女装趣味の大学教授。 どうしようもない人たちのどうしようもなさを見るまなざしはやさしい。 各シーンの最後をストップモーションにして活人画のように見せる。そこに懐メロをかぶせたりもする。ある意味とてもわかりやすい。 全共闘執行部の女子大生を演じるのは新人で、たぶん自分の口にしている言葉を理解できないまま、ただ聞き覚えて一生懸命しゃべっているのだろうなあとほほえましく思う(もっとも当時の大学生も彼女と同じようにわからないまましゃべっていたのかもしれないが)。それがある種の「女子大生」らしい。 アメリカ兵に捨てられた娼婦役も初舞台。それにしては落ち着いて堂々としたもの。 弟役の紫檀双六はこれまで一癖二癖ある役が多く、こんな「ふつうのひと」ははじめてかもしれない。現代風の頼りない男の子がとてもよくはまっている。 ベテラン勢はさすがの貫禄で芝居の世界をささえる。 そのなかで川本三吉の虚言癖のあるおかま役はまさに怪演。ドラッグクイーン—そんな衣装の派手さはないが、充分に派手—というにふさわしい。うさんくささ炸裂。 今回は物語を語るというよりも、それぞれの人物をみせることに重心があるようだ。 全共闘世代独特の言い回しとか、聞き手の年齢を選ぶギャグや音楽が散りばめられていて、ある時代を思い起こさせる。一定年齢以上の観客には懐かしい。
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