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SF自由自在 松岡永子
 今回は客演なしで劇団カラーをより前面に打ち出す、というコンセプトらしい。わたしはこの劇団初見。

 男が目覚めると友人二人がいる。何してんだ? と尋ねると、我々も今目覚めたところだと言う。
ここはどこだろう。小さな装飾のない部屋。テーブルにはトランプ一組。ドアは二つ。一つは開かない。
もう一つのドアの向こうには「(天井に)落ちる部屋」があるだけで外へは出られない。
ここはどこなのか。三人には心当たりがない。
監禁されているのか? 何のために? 牢獄か? 湿度温度が保たれ、時間が来るとキューブ状の食糧が配給される。
あまりに快適な牢獄だな。なぜ? 我々をどこかで観察してるのか?
事態は不明なまま、暇つぶしのためのゲームはつづく。
部屋の隅に転がっていたアンドロイドを起動させる。歌ったり踊ったりはするが、実用性はなくドアを開けることはできない。電話機能は付いているが、圏外。
アンドロイドを交えて、さらに暇つぶしはつづく。
と、電話。博士を名のる人物からの通信で事態は判明する。

大学生だった彼らはレポート作成のため火星に鉱物標本を採りに行った帰り、トラブルに巻き込まれた。
針路を誤り、地球から遠ざかっていく。気づいた時には、燃料は残り少なく自力での帰還は不可能。
救助を求めてもやってくるまでに捜索不可能になってしまう。
だから彼らは残りのエネルギーすべてで地球に向かって針路を変え(慣性によっていつかは地球に辿り着く)、救助までに長い時間がかかることを予想して冷凍睡眠に入った。実際、彼らが消息を絶ってから100年が経過している。
すべての記録を持っているはずのアンドロイドは、手違いで主電源を切られてしまい、初期化されていたのだ。

通信可能圏内に入った彼らはまもなく救出されるだろう。ここでの生活も終わり。100年後の未知の世界で生きていかなくてはならない。一抹の寂しさと不安。

 軽妙なやりとりが楽しい。懐かしのカラオケメドレーやら仲間はずしゲームやらの小技も、独りよがりの楽屋落ちになっておらず、なかなかやるなという感じ。
 設定、構成の手際も良く、生まれた時からSF物語を呼吸して育った世代だなあ、と感心する。

 一方、作中に散りばめられる、SFでは定番の問題提起。

  ——アンドロイドに感情はあるか。
   (「こういう時にはこういう反応をするようにとプログラムされているだけです」
    「その反応を感情っていうんだよ」)

  ——100年後の世界で生きていかなくてはならない時、家族の思い出はあった方が幸せか、いっそ無い方が幸せか。
   (三人のうちの一人は冷凍睡眠時の事故で記憶障害)

 そういう哲学的疑問が、他の細部に紛れて特別浮かび上がってはこない。
一般的に深刻な問いと考えられているものも、彼らにとってはその他のどうでもいい(ように見える)できごとと同じ軽さしか持たないのだろうか。
それが悪いといってるのではない。彼らにとって世界の中のそれぞれのできごとの比重がどうなっているのだろうか、と思っただけだ。
 まあ多分、そういう見方はうがちすぎなんだろう。SFだからこういう疑問はあるもの、として入れて、自分たちにとって本当に切実な問題じゃないから埋没しちゃっただけだと思う。
それなら、そういうシーンであんまり感情込めて台詞を発しない方がいい。実に軽快なエンタティメントだった。

キーワード
■SF
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