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パフォーマー
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会場
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公演日
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後生畏るべし。信じるべし? |
松岡永子 |
初めて見る劇団。あまり期待せずに行って思いがけず面白かった。 作りはやや荒いが、実に楽しませてくれた。エネルギーにあふれてて。 今どきの子らしくパロディのセンスは抜群にいい。戦隊ヒーローものも感動的家族ドラマも時代劇的勧善懲悪劇も北朝鮮の独裁者崇拝も米国の帝国主義的謀略も、同じ地平でパロってみせる。事件に軽重はない。 しかし、物語は実に真っ直ぐ。一見ペダンティックな題名そのままの物語。 山奥の動物園が閉園しようとしている。園長が私腹を肥やすために動物を転売あるいは抹殺しようとしていることを知った飼育係・飯田は、命がけで動物を守ろうとする。その行動を評価され、飯田はヒーローにスカウトされた。Mr.Mの手によって改造動物としての身体と特殊能力(飛び抜けた知能、腕力など)を与えられた彼ら五種類の動物たち(猿、兎、ライオン、犬、そして人間)は地球を救う使命を帯びているのだ。 飯田には、別れた妻と息子・シンラがいる。シンラは素直すぎるくらい素直でおとなしい。実は彼は、本物の自分を心の底に封じ込め、嘘の自分で嘘の世界を生きている。 自然保護を謳うやさしげな風をした羽生田キョウジ(これはアニメの美形悪役キャラの系統らしい。愛情に飢えた子ども時代ゆえ世を拗ねている、というお約束のパターン)によって、一行は約束の地へと導かれる。この地の門は、五種類の動物が心を一つにした時開き、どんな願いでも叶えてくれる。キョウジもMr.Mと契約しており、自分の望みを叶えるための筋書きを書いていた。 今、この時、最も強く望んだことが実現する。 動物たちに全てを託されたシンラは、世界に対して目を閉じ心を閉じている。その心の中にキョウジが入り込む。「君は僕と同じに世界が大嫌いなはずだ。嘘の世界などおしまいにしてしまおう」 一方、シンラが心を閉ざすきっかけになった捨て犬・クロ(彼は改造動物の一員になっていた)は、そんな風に終わりにしてはいけないと励ます。 シンラは、自分で世界を変えるために、世界にそのまま在るよう望む。 気がついた時シンラは、動物を引き取って移動動物園を始めた父親と、仲直りした母親と一緒に暮らしている。 軽やかにおどけてみせる現代性の中で、主張する意見は至極真っ当。 叫ばれる言葉はあまりにも古典的。 曰く、 「生きることは意志である」 「世界を変えたいと思うなら、その世界がどんなに醜くても目を逸らしてはいけない」 「世界の中の存在は、それ自体の中に世界を変える(変われる)力を持っている」 「やってみる前から諦めるな」 等々 いかにカマトトのわたしでも、さすがに口にするのは恥ずかしい。それを衒いなくやってのけ、それなりにさまになるのは、やっぱり若いから。若さだけは努力や技術ではどうにもならないと実感する。 技術的には進歩してて、いろんなこと軽く扱えるようになっていて、でも、伝えたい想いは昔と何も変わっていないのだな、としみじみする。 こんな言い方は、当人達には「まあ、おじいちゃんの若い頃そっくりねえ」という発言と同じで、なんともリアクションに困るのだろうが。 物語を通してなされる叫びは真摯なものだとわたしは感じた。その感じは間違っているだろうか。 それすらパロディの一部なのだろうか。ならばまさに後生畏るべし。 しかし、そこまで衒学的な感じもしなかった。なにより、現代の若者がそこまで虚無的だとは思いたくないのだけれど。
キーワード
■ジャングル ■サマークエスト |
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