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パフォーマー
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会場
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公演日
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反転を繰り返す悪夢のスパイラル |
西尾雅 |
初演は、98年5月14日−17日、同じAI・HALLにて。偶然にも先日再演された太陽族「それを夢と知らない」とほぼ同時期に初演、5年のサイクルが再演に合っているのかも。出演者は石岡潤一、酒井宏人、森下亮、本郷崇士、チャイ、谷本誠、青木秀樹、塚本愛子、ハルキ、三好淑子、西野藍、床田光世、宮崎温子、フランソワ、アリムラナオ。今作にも出演しているのは森下のみだから、再演ながらまったく違う味わい。が、開演直前におなじみ「時計じかけのオレンジ」サントラが流れるや否応なくクロムの世界へ引き込まれる。劇団☆新感線のオープニングテーマ曲にジューダスがかかると、中島かずき作のいのうえ歌舞伎だろうと、いのうえ作のおポンチだろうと新感線に変わりないように、はたまた宮藤官九郎のウーマンリブがやはり大人計画であるように、血は水より濃い!? 会場内は三分され、中央の舞台を客席が左右から挟む。向き合う客席間の行き来はできず、舞台は裁判所に見立てられ、観客は殺人事件を審議する陪審員を傍聴する仕掛。男女2人を殺した犯人と思しき人物を尋問すればするほど事件は混迷を深める。証言の度に違う事実が明かされ、二転三転して虚実もあやうくなる。裁判所と事件現場とホテトル嬢控え室が入替わり、被告と被害者そして陪審員がすり替わる。加害者と被害者、妻とホテトル嬢、遊びと本気、男と女、ゲイとストレート、サドとマゾ、裁判と茶番、死と生、正常と異常、すべてが反転し相対化される。審議する陪審員たちの方が実は監禁され、裁かれていることが暗示される。そもそも事件は実在したのか、有罪か無罪の意味さえも失われる。気に入らないホテトル嬢をチェンジする要領で、現実が次々にチェンジされる。もはやそれは現実ではなく悪夢。けれど近未来を描いた本作の「ソドム」が現実でない保証はどこにもない。つまり、観客もまた劇世界から告発され、裁かれているのだ...。
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