log osaka web magazine index
WHAT'S CCC
PROFILE
HOW TO
INFORMATION
公演タイトル
パフォーマー
会場
スタッフ・キャスト情報
キーワード検索

条件追加
and or
全文検索
公演日



検索条件をリセット
批判を祝祭に変える野外劇のエネルギー 西尾雅
ラフレシアを称する円形野外テント劇場はサーカスに似ている。春は南港の駐車場に翻り、さまざまな劇団が競演して柿落しを祝ったラフレシアだが、周回通路を挟んで客席に囲まれた吹き抜けの中央舞台は見世物小屋を想起させる。開演前に役者が売り子となって軽食飲み物やブロマイド販売に回るのも親しみを感じさせる。おでん屋台がそのまま劇中で使われるのも効率がいい。夜店をひやかしながら神社の境内で大道芸を観るのに似た祝祭空間の仕掛がラフレシアにほどこされている。

劇団主宰そして作演出の長山がピエロメイクでサンドイッチマンよろしくプラカードを持つ。エンドンなる役名はチンドン屋に線が一本欠けるの意なのか、韜晦と謙遜ではぐらかすところに人生はしょせん夢との達観が透ける。唐組でも役者が歌い上げてドラマティックに場転するが、楽市もゆったりした歌謡曲調のメロディでテント内をなごませる。あるいはサーカスのジンタのように物悲しい気分にさせる。

おでん屋向かいのクラブの店先でヤミ金融の取立て・マリコ(佐野)と保険屋・アメミヤ(九谷)が出くわす。アメミヤとマリコの夫・ヨシオ(渡辺)は友人、ヨシオが怪我で働けない分マリコが仕事に精を出す。借金を抱えるクラブのマダム(古川)はアメミヤと組み、自作自演の火災による保険金詐欺を企んでヨシオを引き込む。ヨシオは取立てトラブルで襲われ、股間を負傷して男性機能をなくし、自暴自棄になっていたのだ。それでもヨシオを愛し、夫を止めようとするマリコ。マダムが店の客から預かっていた銃が暴発し、一同入り乱れて撃ち合いとなる。

成功を意味するアメリカンドリームの源泉は金と権力。力は正義と素朴に信仰できる国の若さがまぶしく、うらやましい。力の背景には男性原理が働いており、プラカードの支柱や銃は明らかに男性のシンボルを指す。対するマリコは女性を象徴し、産婆(睡)の助けを借りて妊娠を果たす。彼女らは、妊娠には男性の力だけでなく、宇宙の意志が必要だという。が、男性原理と女性原理は相容れ難く、摩擦を解消しようとして暴力が生じる。アメリカが力と信じる男性原理は暴力と結びつきやすく、短絡的に解決を図ろうとする。借金と保険、金儲けとチャリティ、理想と現実がダブルスタンダードのアメリカのもろさが裏目に出る。そのアメリカに尻尾を振るしかないのが日本の実態。私たちは、アメリカという理想にただあこがれる愚かな子犬に過ぎない。

警句を含むが、野外劇はやはりケレン重視。火を使ったダイナミズムや被り物で練り歩く幻想をまぶす。テストステロン(男性ホルモン)など大人向けの言葉も飛び出すが、就学前のお子様も客席で目につく。芝居は社会批判でなく、あくまでわい雑に楽しむもの。公園の野犬の遠吠えか音効か判然としない犬の鳴き声も野外の魅力。すべては都市の片隅に咲いたひとときの祝祭。その祭のエネルギーこそが明日をたぐり寄せる。

キーワード
■大阪野外演劇フェスティバル
DATA

TOP > CULTURE CRITIC CLIP > 批判を祝祭に変える野外劇のエネルギー

Copyright (c) log All Rights Reserved.