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パフォーマー
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会場
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公演日
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正義は味方 |
松岡永子 |
前作「正義の存在」は四夜原さんの脚本だったので、軽妙なミステリー(?)に仕上がっていたけれど、それでも藪田さんと布施さんの争い(ブッシュさんとフセインさんですね)などというものが、織り込まれていた。「正義」というキーワードから、社会とか世界という方向をやはり見てしまう。 対して。今回の音間哲作「正義は味方」は、現代の若者らしく、ベクトルは内向き。 名前と内実のギャップの問題——流行りの言葉で言えばアイデンテイティ——が「正義」というキーワードから導かれる。 正義(まさよし)くんの葬儀に集まった中学時代の同級生。勝利(かつとし)、勇気(いさき)、愛(めぐみ)、真実(まみ)、勤(つとむ)、勉(つとむ)。正義は名前通りの正義感あふれる若者だったが、他の者は名は体を表していない。勝負運のない勝利、意気地なしの勇気、報われない恋をしている愛...。 葬式後、なぜか正義の家には彼らしかいない。そこに現れる葬儀社社員、坊主の格好をした男(正義のバイト先、イベント会社の人が衣装のまま来た)、弁護士、自称正義の婚約者...彼らを遺産狙いの偽物と誤解した勝利たちは、正義のお姉さんを守るため立ち上がる。 ま、この辺のドタバタが見どころ。 計略が裏目にでて「全部お前たちのせいか」と追いつめられ、「正義の友達というのも嘘じゃないのか」と言われたとき、 「あ、それはホント」というお姉さんの言葉で話の流れが変わる。 「正義がいつも話してた。勝負には弱いけど仲間思いの勝利くん。気は弱いけど優しい勇気くん。惚れっぽいけど面倒見のいい愛ちゃん...」 正義は友達の、名前とは裏腹であっても良いところを見て、大切に思っていたのだ(名前と実質が違うのが傷であるということは、「気が弱くて優しい」ではなく、「気が弱いけれど優しい」という言い方に表れている)。それだけで皆、救われてしまう。 「携帯電話を切ってください」と事前注意を与える女の子にからむ客を用意して正義くんとのバトルに持ちこむ冒頭から、やや強引な物語、ムリヤリな展開を、勢いのある演出で押し切ってしまうあたり、さすがベテラン阿部。しみじみシーンもちゃんと作ってあったし。 名前通りに生きて、チンピラに殺された正義。 名前通りに生きられない友達、組織の論理のために自分の信念を貫けない警察官の姉を、正義は許し、救う。 では、正義は誰が救うのか?正義は正義自身を救えるのか? 舞台に一人残った正義くんの背中を見ながら、ふと、そんなことを思った。
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