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パフォーマー
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会場
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公演日
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暴力の連鎖を断つ新たな暴力 |
西尾雅 |
チラシに謳う「ノーマルな家庭劇」が既に皮肉。タイトルはアルファベットのOが1字多く、ノーorマルとも読める。主宰のサカイは作・演出でなく構成・美術を名乗る。独特の造語やアート感覚で演劇にとどまらない映像、美術、音響、音楽、パフォーマンスのコラボを狙う。脱演劇を目論むサカイの戯曲は、逆に演劇界で評価が高く、第9回OMS戯曲賞大賞を受賞する。が、その真髄は戯曲をアートに包むライブでこそ発揮される。 TVモニターが載る金属パイプの棚が正面に据えられ、扉のように左右に開かれて開演。舞台背景とモニターに映し出される映像やSMボンデージ衣装の皮や金属の質感とぬいぐるみ衣装の動物(モルモット、カエル、サル、ブタ)のメルヘンな趣が違和感を醸し出す。奇妙な居心地悪さとソリッドなカッコ良さの同居とでも言うのか。シュールレアリスムはミシンと蝙蝠傘の出会いに喩えられたが、ミシンと電子レンジが積み重ねられた小道具が現代の不条理を象徴する。 愛し合う新婚カップルの夫は、けれど性的不能。妻の求めに応じられぬ夫が車内の痴漢行為を疑われる。妻は実家の母と折り合いが悪く、執拗なストーカーにも悩む。いっぽう、公園でペットのカメやモルモットを虐待する幼女。幼女の動物虐待は、家庭内で虐待された反動と判明、サルぬいぐるみ男の世話で福祉課のスタッフに保護される。 バラバラのパズルが、しだいに焦点を結ぶ。現実と幻想、本音と建前が反転しサスペンス仕立ての真相がやがて明かされる。幼児を保護すべき福祉課の担当職員が、裏では幼児姦のホームページを主宰する。ストーカー犯人は実は夫、夫は脅える妻に性的興奮を得る。妻は妊娠するが、実母を嫌悪する彼女はお腹の子に愛情がなく自殺を図るが、止めようとした夫が死ぬ。母に虐待される幼女は、望まずに生まれた彼女の子供、そしてかつての彼女自身。繰り返される家庭内暴力と性倒錯が、幼女のペット虐殺という連鎖を生む。殺意の根源を突き止めた幼女の刃は、ペットに飽きたらず産みの母に向かう。自分を生んだ者の否定、それは自身の存在否定。世界のいっさいを拒否する彼女の絶望が舞台を暗転させる。開幕と逆に左右から閉じられる扉は、彼女を世界と隔てる嘆きの壁と化す。 現代に迫る意欲にあふれる。が、03年に起こった現実の事件、長崎の中学生が小学生男児を駐車場屋上から突き落とし、河内長野の大学生と高校生のカップルが家族虐殺を図った衝撃の方が実は大きい。現実が演劇の想像力をもはや圧倒している。現在の作家の困難はそこにある。
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